Children’s true stories.

「冒険に出た子どもたちのあの笑顔、見せたいよね」

 

「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト学習、子供が主体の学びの冒険」今回は「これを発表会にしちゃおう」プロジェクトと称して、一体どこにたどり着くのか子供も先生もはたまた親もワクワクドキドキ、とびっきり素敵な子どもの学びの旅に先生たちをご案内しちゃいます!プロジェクト学習をあなたの指導案に書き込むコツもご紹介しちゃいますよ!くろねこ先生の実践例の写真もいっぱい、読みごたえばっちり笑!

前回のお話

前回の記事では、先生たちに「一斉保育のシンボルみたい」と言われ、冷たい視線を浴びている幼稚園の年中行事についてのお話から始めてみました。そしてその一つ「発表会」を取り上げ、日本の郷土教育と幼稚園教育要領、レッジョエミリア哲学Reggio Emilia Approach、そしてオーストラリアのセンスオブコミュニティSense of Communityの視点から、「発表会」の持つ本当の意義につて考えてみました。もしまだ前回の記事を読んでない方はぜひここをクリックして読んでみてくださいね。

プロジェクト学習のイントロダクション記事はこちらをクリック!また、テーマ学習とプロジェクト学習の違いはこちらの記事でご紹介しています。 ご興味がある方はぜひチェックしてみてくださいね。

前回は「大人が始める」から脱して「子供が主体となって始める」そんな「年中行事」としての「発表会」を始めるには、じゃあどうしたよいだろうという疑問をシェアしました。この記事では, 「幼稚園の発表会」をプロジェクト学習に組み込んた時、そこで繰り広げられる「子どもが始める学びの冒険」を私たちが実際にどのようにサポートしていったらよいのかを、一緒に考えて行きたいと思います。

 

プロジェクト型学習と幼稚園の発表会

 

これまでの「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト学習、子供が主体の楽しい学びの冒険」シリーズの記事で、プロジェクト学習の鉄則は「子ども」と、「子どもが感じる不思議」が主体であることはもう感じ取っていただけたと思います。そして先生自身が学習者自身になって子供の探求の旅を一緒に楽しみ、学びの過程をサポートしてゆくのが基本のプロセスです。

発表会でも教室に作った舞台で子供と一緒に冒険を楽しむくろねこ先生。メルボルン公立幼稚園4才児クラス2016年。親たちは、子供が劇創りをするためのいろいろなリサーチ活動をサポートしてきた。子供と家族と先生が発表会をやることで一つになれる瞬間

前回の記事でお話しした「発表会をやる意義」を意識しながら、私たちがプロジェクト学習を通して子供たちに「発表会」を体験してほしいなと願うときは、実は「学び冒険」の中でその「発表会」をやる絶妙なタイミングを故意に見付け出さなければなりません。今から詳しくお話してゆく「これを発表会にしちゃおうプロジェクト」は、子供がプロジェクトを通して創り上げるもの(って言われたら、何を想像しますか?これについては後程お話しします。)が完成したその時にこそ、親を招待してそれを発表する、というものです。なので、こどものプロジェクト学習の経過を見ながら発表のタイミングを見つけなければならないということです。

「そんなの無理だよ、だってそういう行事は年度の初めに計画を立てるんだから」と呟いた方、いらっしゃいますね笑?そうですね。わかります。これは親からの要望ということもありますよね。「発表会は見に行きたい、けど仕事の都合もありますから年度の初めに計画してくれないと困ります。」と親御さんに言われるのが現状ですね。

どうしたらいいでしょう?やっぱり始めから何をいつやるって決めたほうがいいのでしょうか。けれど、先生が始めから計画した年中行事としての発表会となると、また「大人がやりたい」幼稚園に後戻りです。

子供がプロジェクト型学習を通して創りあげるもの

Photo by Hailey Kean on Unsplash

なので、くろねこ先生は言います。ここは、「子供が発表会で何をするか」の枠組みを取ってしまったらいいんです。先ほど「子供がプロジェクト学習を通して創りあげるもの」っていうと何を想像するか、と聞いてみましたが、これが「子供が発表会で何をするかの枠組みを取り払う」大切な鍵となります。

日本でもオーストラリアでも「発表会(オーストラリアではコンサートというのが一般的かな)」というと、必ずと言っていいほど「劇」とか「歌」とか「詩の朗読」などになりますね。ここです。この枠組みを外す、ということです。前回の記事の中で、読者さんとくろねこ先生は「発表会」は、子供が「市民(地域)の一員」であることを認識できる大切な経験となる、とお話ししました。発表会がこのセンス オブ コミュニティー Sense of Communityを体験するためなのものであると信じてみると、発表会でやるものは必ずしも「劇」や「歌」だけではないと、くろねこ先生は思うのです。

Photo by Anna Earl on Unsplash

あなたがもしプロジェクト学習を自分の実践に導入したとして、「11月に発表会ができたらいいな」と思っているとします。で、その時あなたが、「子供たちが発表会でやるもの」の「枠組み」を外してみたとしたら(「劇や歌じゃあなくてもいい」と思ってみたら)、いったいあなたと子供たちは発表会で観客(家族)に何を観てもらいたいって思うでしょう?あなたは、きっと「親に見せようと練習した何かより、一生懸命に『あのこと』に夢中になって取り組んでいた子供たちのあの様子をママパパとシェアできたらどんなに素敵だろう」って思うんじゃないでしょうか?。あなたが子供たちと本当に質の高い活動やプロジェクトワークに取り組んだ年ならばなおさら「ああ、あの時あれを発見した時の子供たちの興奮した様子を、舞台でも再現できたらなあ」とか、「あの子たちがプロジェクトで作った創作童話見てもらうのが一番なんだけどなあ」などと思うんじゃないかなとくろねこ先生は思うのです。違います?

子供たちの息づかいがきこえる「生きた学びの舞台」

そんな風に、発表会を、子供がプロジェクトで「創りあげた」ものなら何でも発表できる場にしたとすると、「発表会」は、たちまち子供たちの本当の息づかいがきこえる「生きた」学びの舞台へと、化していきます。その舞台には、毎年子供達がう歌わなければならない歌もないし、理由がわからず覚えたセリフを子供たちが棒読みしている場面もないのです。

で、あなたが、「一番シエアしたいこどもの学びの冒険の世界」を見つけたら、あなたの想いを子供たちに伝え、子供たちがその事に賛同したら(ほぼ99.9%の確率で子供は賛成するでしょう。どうしてかって? それは、質の高いプロジェクト学習は子供を夢中にさせ、子どもはその冒険の中で自分に何ができるのかを確認します。そして自分にもこんなことができるんだ、って再発見すると、子どもは、あなただって、それを一番好きな人に見てもらいたいって思うでしょう?)一緒に「発表会」の計画を立てればいいわけです。あなたは先生ですが、プロジェクト学習の指導スタイルの視点から、子供と同じ「学習者」でもあるわけですから、発表会の日にちを提案する権利もありますね(笑)。 そして日にちが決まったら後は子供達と一緒に招待状を作ったりして、子供たちが自分たちで計画を立ててやっていることだと認識できるようにサポートしていきます。

どうでしょう?これで、あなたは園長先生が計画したとおり、親が期待した通り、11月に発表会ができるようになるわけです。そしてその発表会は、あなたの子供たちが主体になって創り上げたあなたの子供達だけの唯一無二の、本当に特別なものとなるでしょう。

意図的な指導インテンショナルティーチング

Photo by Heidi Fin on Unsplash

あ、そこで「でも、じゃあ、結局大人が発表会やってほしいからやらせるように仕向けてるだけじゃん」ってまた呟いた人、いますね?

実はそれでいいんです。だって、前回の記事で確認したとおり、幼稚園で年中行事をやることはあらゆる面で意義があります。私たちは教師ですから、子供たちに「意図的に」経験してほしいことや学んでほしいことがありますね。 そして皆さんの知るようにそれには私たちが教師になるために学んだ教育学的な裏付けがあるわけですね。ですから、「意図的に教えようとすること」に関して、必要以上に敏感になる必要はないと、私自身もアドバイスを受けたことがあります。

この意図的な指導のことをオーストラリアではインテンショナル ティーチングIntentional Teachingと 呼び、初等教育指針The Early Years Learning Frameworkの柱の一つになっています。 このIntentional Teaching Approachについては、また次以降の記事で、文献を挙げながら細かく説明してゆきたいと思いますが、この指導技術は、プロジェクト学習を取り入れる上でもかなり重要なツールとされています。今一つだけここで特記したいことは、正直、このアプローチはオーストラリアの先生より日本の先生のほうが、感覚的に熟した理解をお持ちだと、くろねこ先生は密かに感じています(その理由やエピソードは次回以降の記事で書きますね)。

プロジェクト学習を導入して その学習結果を 「発表会」という形でプレゼントしようと提案する事は、このインテンショナル ティーチングでの先導という事になります。けれど、プロジェクト学習では、 先生自身が「学習者の一人」としてグループの意思決定のプロセスに参加するという事がとても大切になってくるわけです。そして 子供が自分たちで「発表会」をやるという事を決め、計画を立て、創り上げるという意識を持って活動に取り組む、 その意識が持てるよう、教師がサポートしてゆく事が決定的な条件となるわけです。

「大人がやりたい」行事から子供主体の行事へと脱皮

Photo by Larm Rmah on Unsplash

少し、話に起伏ができて、ごちゃごちゃになっちゃいましたかね? 詰まるところ、子どもがプロジェクト学習を通して「発表会」をやるという時は、子どもが自分たちでやろうと決めてやることになり、私たち教師は、その裏に教育的意図があったとしても、それは表面には出さない自然体で子どもの活動をバックアップしてゆく、ということになるのです。

ですから、私たちはここで「大人がやりたい」行事から子供主体の行事へと脱皮することができるわけなのです。

それを発表会にしちゃおうプロジェクトの実践例

 

では、実際どんなふうにプロジェクト学習を進めて、発表会という冒険の果てに子供達を案内してあげることができるのでしょうか?

実践例をご紹介しましょう。今日はその実践例を、実際の指導案に照り合わせながら、それに沿って「グループの学習記録(ドキュメンテーション)」についてもお話してゆきますね。前回までは実践例を一つのお話のように書いてみましたが、今回はちょっと総括的に書いてみますね。

「それを発表会にしちゃおうプロジェクト」 5つの実践例スタイル

Photo by Susan Q Yin on Unsplash

「もしかしたら発表会になるかも」のプロジェクトに発展するきっかけになることを挙げて、それがどうやってプロジェクト、発表会と発展してゆくか、ちょっと簡単にまとめてみました。私の実践例も今日はほんの一部ですが写真を見ながら紹介してみますね。

プロジェクトプレゼンテーション(発表会)メルボルン公立幼稚園4才児クラス2014年。3つの違うプロジェクトグループが経験した学びの冒険を家族の前でシェアした。

(1)例えば…面白いお話や絵本、クラスでの会話から発展するプロジェクト

読んでもらった絵本から会話が広がって「劇創り」に発展することもある。例えば「宇宙人」とか「海賊の宝の地図」などの話でしばらく盛り上がったら、それに関わる事を調べて、自分たちでお話を作ってみるプロジェクトに発展したりする。発表会ではこの創作劇を披露する。

くろねこ先生幼稚園クラス実践例から1つ;宝探しのお話プロジェクトーこの時は宝島にある物をリサーチして絵に描き、それをデジタルカメラを使って一つの地図にして、劇の中で使った。劇のために大きな海賊船も作った。( 2016年 ,メルボルン公立幼稚園)

「宝島のお話」プロジェクト メルボルン公立幼稚園4才児クラス2016年。 「アイランド」にあるものをリサーチして絵を描き、それをデジタルカメラで撮って写真にし、大きな紙に張り付けて「宝島」の地図を作った。この地図を見ながら劇のお話を考えた。
「宝島のお話」プロジェクト メルボルン公立幼稚園4才児クラス2016年。 海賊船はお家からテッシューの箱を持ち寄ってそれを積み立てて製作。このプロジェクトのために子供たちは古船の造りについて調べた。

(2)例えば…楽器で遊ぶから発展するプロジェクト

楽器、または身近な物を使ってリズムを作ってみたらそれが楽しい経験となって、今度は自分たちのオリジナルの歌を作ってみようという事になったりする。楽器も手作りしよう、なんてなるかもしれない。そしたら発表会では創った歌を手作りの楽器を使って演奏したりできる。演奏中、スクリーンで子供たちが作った「楽譜」を映し出すのもいい。

くろねこ先生幼稚園クラス実践例から1つ; みんなで楽器を使ってあるリズムのパターンを練習していたとき、自分たちでも簡単なリズムを作ってみようという事になった。 これがミニプロジェクトに発展し、発表会の前座となる。(2016年 メルボルン公立幼稚園)

卵型のシェイカーを紙のラインに並べて楽譜にして皆でリズムをつくる。これが小さなグループプロジェクトに発展し、学期末の発表会の前座として家族に披露することとなった。メルボルン公立幼稚園4才児クラス2016年。

(3) 例えば…「興味を持ったことを調べて遊ぶ」から発展するプロジェクト

何かがきっかけとなって「恐竜」とか「カブト虫」とか特別なことについて夢中になってる子供を見ることがあります。それが、リサーチしてみたり、実際屋外で調査、実験してみたりするプロジェクトに発展することがよくあります。またこれがきっかけとなって創作活動になることもあります( ステゴサウルスを作ってみよう、とか笑)。発表会では子供が制作した学習チャートをプレゼントしたり、討論の様子をスクリーンに映し出して披露したりできますね。

くろねこ先生幼稚園クラス実践例から1つ;木の成長から始まった話が「環境問題」の話になった。木が人間に与えてくれることについて調査し、最後には環境を大切にするためにいくつかのことを実践し、発表会でそれをプレゼントした。(2012年 メルボルン公立幼稚園)

The beautiful gifts from the trees 「木からの素晴らしい贈り物」このプロジェクトではこのポスターを制作するほかにも、リサイクルの箱でおもちゃを作ったり、リサイクルペーパーを作ったりして、それを発表会でプレゼントした。2011年、メルボルン公立幼稚園

(4) 例えば…運動遊びから発展するプロジェクト

新しい運動遊びに挑戦してみたらすごく面白くて、どんどん難しいテクニックを試したくなる子供がいるでしょう?それを練習して披露する、ていうプロジェクトになることもある笑。発表会ではこれを舞台の上で実演して見せる。

くろねこ先生幼稚園クラス実践例から1つ;子供が計画して開催したミニオリンピック プロジェクト。親を招待して開会式のパフォーマンスをした後、競技を一緒に楽しんだ。(2011年 メルボルン公立幼稚園) でもなぜか、その写真が見つからない!。下の写真は、 2014年にやったサッカープロジェクト。

サッカーの好きな子どもたちグループのプロジェクトプレゼンテーション。劇風にしてサッカーテクニックを舞台の上で披露した。お父さんたちには、サッカーマッチをする相手にチームとして劇に参加してもらった。2014年、メルボルン公立幼稚園

(5) 例えば…絵画 工作 造形遊びから発展するプロジェクト

これはもう簡単にビジョンが浮かんできますね?例えば「葉っぱを集めてきてコラージュで地球の絵を作ってみよう」など、創作アートのプロジェクトです。「園庭にどんな遊具が欲しい?」という質問の答えを探るために自分たちで実際に作ってみる、なんてプロジェクトも世界のあちこちで紹介されていますが、そんな例もありますね。発表会では実物を披露したり、スクリーンで創作過程を映し出したり。下の写真の例は発表会ではありませんでしたが、親御さんの送迎の時間に開いたちょっとしたプレゼンテーションになりました。

「氷でお城を作ろう」プロジェクト -映画「アナと雪の女王」の影響で子どもがアイスキャッスルの興味を持ち、氷のお城を作ってみようという事になった。試行錯誤の後、本当の氷で作るのは難しいという事になり、透明のフードケースを持ち寄って作ろうという事になった。制作日の最後に親たちを招待して作ったものを披露した。メルボルン公立幼稚園4才児クラス2015年。

子どもの遊びをどうやってプロジェクトに発展させるの?

子どもの遊びをどうやってプロジェクトに発展させてゆくのか、そのサポートの仕方の例は このシリーズ「日本でできるの?やろうよプロジェクト学習、子供が主体の楽しい学びの冒険」初回のイントロダクションやそれに続く実践例1,2に、「お話風」としてちょっと詳しく書いてみたので是非チェックしてみてください(これからも違う例をどんどん出してゆきますよ~)。基本的には、 これも繰り返しになりますが、プロジェクト学習の鉄則は、教師が子ども主体で始めた冒険の中に入り込み、一緒に「不思議」または「やってみたい』を見つけ出し、それを探り出す道をサポートしてあげる、という事です。

プロジェクト型学習を指導案に書き込む

 

では、このプロジェクト学習を、日本で使われる典型的な指導案に組み込んでみましょう。今回の記事はすでに長くなってしまったので、ここでは簡単な「週案」の記載の仕方の提案です(これからこのシリーズの中でいろいろなパターンをどんどん説明していきます!が今日はちょっと簡単に…)

プロジェクト型学習を「週案」にアバウトに書き込む

(Image source ;保育のお仕事レポート「指導計画作成のコツを考える~保育士全員が悩みを経験?!~【前編】」https://hoiku-shigoto.com/report/archives/6050/)

プロジェクト学習を週案に書き示すときは、ごく簡単に記しておきます。例えばこうです。

  1. 前週の子どもの姿 ;「恐竜のお話の劇」作りのプロジェクトに夢中で取り組んでいた。「恐竜はなぜ絶滅したのか」という質問が出た。
  2. 内容; (1)プロジェクト学習「恐竜のお話の劇作り」。お話の続きを作るため「恐竜はなぜ絶滅したのか」について話する。どういう展開になるだろう?
  3. 環境 ;(1)プロジェクト学習ー 劇遊びを続けられるよう部屋空間を広く整えておく/いくつかの恐竜絶滅について書かれてあるページを見開きにして「ミニ恐竜コーナー」(*教室に設置するミニ博物館については、こちらの記事を参考にしてね!)にディスプレイする。その他の環境設定の詳細はドキュメンテーション2021年X月O週記録参照(*この「ドキュメンテーション」については、後の項目で説明します。)
  4. 活動 ; (1) プロジェクト学習ー子どもの プロジェクト学習の展開をサポートする。詳細はドキュメンテーション2021年X月O週記録参照
  5. 保育者の支援 ;(1) プロジェクト学習を「学習者の一員」としてサポートする。 用意できる保育者の質問「結局恐竜が絶滅した理由はいくつあるの?」詳細はドキュメンテーション2021年X月O週記録参照(*ここはあえて保育者の質問だけに留めておく。)

*ちょっと説明ですが「(1) プロジェクト学習」と書くのは、週案に記載する事は他にもありますよね、だからです。例えば、この週は「落ち葉を拾って遊ぶ」なんていうのも主活動に入るのかもしれませんね、そしたらそれが「(2) 落ち葉を拾って遊ぶ 」となるわけです。

こんな感じです。 みなさん気が付いたかと思いますが、プロジェクト学習についての週案はかなり「アバウト」にしておきます。だって、子供がどう動き、プロジェクト学習がどう展開されるなんて、 プロジェクト学習では完全な予想は尽きませんし、ここにこそ、この学習法の良さがあるわけですからね。(それに、もしかして子どもを2~3つのグループに分けて違うプロジェクトをやるってこともあります。その場合はますます内容を細かく記載することはできませんね。ーこのプロジェクト学習のグループ分けについても、後の記事で書きますね)

「園長先生にこんなのだめって言われちゃいます。」

ですが、「園長先生にこんなのだめって言われます」っていう声も聞こえてきそうですねー。私も オーストラリアでプロジェクト学習を導入するにあたって、同じ心配をしながら実践することもありましたが、結局は自信をもって「自分の教育的意図」を説明できるオリジナルのスタイルを作って来ることができました。

先生としてあなたが1番大切に思う事

一番大切なことは、誰かに(園長先生でも、主任でも、監査でも、どんなお偉いさんでも)教師としてきちんと自分の意図していることを説明できるかどうかです。「子供が主体なので、活動がどのように展開してゆくかは、保育者目線で計画を立てることができません。」と説明できることです(勇気がいるよね~)。でも、皆さん考えてみてください。こんな説明を聞いたら相手はあなたの指導案にペケすることできると思います?

「はい、ペケにすると思います」って呟いた人、いますね?…本当はそうかも!でもね、プロジェクト学習は周りを確実に納得させることのできる強みも持っています。

プロジェクト型学習の記録

Photo by Sigmund on Unsplash

それは、Learning Evidence(学習の証拠)をドキュメンテーションDocumentationとして記録に残しておくことです。「週案の書き込み例」でメンションした 「詳細はドキュメンテーション2021年X月O週記録参照」というのがこれです。 逆に言うと、この学習記録がないと、学習(子供)者本人も教師も親もお偉方さんも、「その時点まで」学習がどうやって「その地点」にたどり着いたのかを、確認することができないので、プロジェクト学習は成り立ちません。プロジェクト学習は 大なり小なりグループで行うものですし、子供たちの様々な会話のもとに展開されていきますので、そのつど記録が必須なわけです。そうでないと 子供も先生もプロジェクトを次にどのように進めてゆくのかわからなくなってしまいますね。

なので、この学習記録が計画よりもより重要になってくるわけです。ですから、プロジェクト学習になじみのない関係者に「計画は?」と尋ねられた時、教師はその旨をきちんと説明して、(例えば「週案の段階でははっきりとした計画を示しませんでしたが今週活動をしてゆく上で学習の展開がはっきりすると思います。前週の記録を見ていただけるとわかります。」と言って)「学習記録」を提示できるのです。

なので、あなたがプロジェクト学習を取り入れるときは、指導案には、そのことについて極力簡単な言葉で明確に示しておきましょう。 例に挙げたように「詳細はドキュメンテーション2021年X月O週記録参照」と書いておきます。

Learning Evidence学習証拠とドキュメンテーション

さて、このドキュメンテーションDocumentationについてですが、これは奥が深いです。このドキュメンテーションの理念が欧米の幼児教育全般に「ブわあ~」という勢いで広まったのもレッジオエミリアの「先生はリサーチャーTeacher as researcher」という理念の影響だというのは周知のとおりです。

オーストラリアでも2009年の新教育指針The Early Years Learning Framework発布以来, ドキュメンテーションの理念がさらに重要視され、2014~6年ごろにはピークを迎えた感があります。 このドキュメンテーションへの 超越した価値観が教師の仕事に不可能に近い大量さを 生み出し、先生たちが夜でも週末でも仕事を持ち帰るのが当たり前という状態になってしまったわけです。現在ではこれを緩和できるデジタルプログラム「親と先生のコミュニケーションプラットフォーム」がどこのセンターでも使用されるようになりました(それでもまだ家に仕事持ち帰りは当たり前ですが笑)。オーストラリアで使われる代表的なのは「Storyparkストーリーパーク」でしょうか。けれど、これによって、本来のドキュメンテーションが持つ明確な学習記録やコミュニケーションの質が保たれているか、というのは少し謎にも思います。

次回の記事「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の楽しい学びの冒険 5」は、このドキュメンテーションについてもっと詳しく説明してゆこうかと思います。ぜひ購読登録をして記事の更新お待ちくださいね。購読登録はこちらをクリック!

また遊びに来てね!

今回の記事「それを発表会にしちゃおうプロジェクト」~日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の楽しい学びの冒険 4」いかがでしたか?

「プロジェクト学習なんて無理無理!」なんて手を振っているあなた、本当は「ちょっとおもしろそう 」なんて心のどっかで感じていませんか?「日本のみんなでやろうよ精神なんて古い!」なんて言っても、私たちはやっぱり皆で繰り広げる大冒険が大好き!。そんなわくわく感、ぜひ子供たちと一緒に体験してみましょうよ!

「こんなトピックでの実戦例を紹介してほしい!」というのがあれば、このページの下にあるコメント欄か、こちらのコンタクトページからぜひリクエストくださいね。また、くろねこ先生は「プロジェクト学習を自分の指導案に取り入れたい!」という先生方をメールを通してお手伝いさせていただいています。ご興味がある方はぜひこちらをクリックして詳細をご覧くださいね!

こんなお話もあるよ!

コメント(新着記事のお知らせを希望される方はチェックもしてね!)