The journey of a seed.

Kindergarten Project-Based Learning

 

 

日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の学びの冒険~ドキュメンテーション編 虎の巻第4巻「 くろねこ先生のドキュメンテーションお見せします」です!この ドキュメンテーション編 虎の巻では、9巻を10回の記事に分けて、プロジェクト型学習には欠かすことのできないドキュメンテーションの役割とその取り組みについて読者の方と一緒に考えています。まだ前回の記事を読んでない方はこちらから!

 

 

他にはない深掘り思考の旅、気楽で呑気なのに真剣でかつ情熱的、とってもユニークなくろねこ先生のオリジナル、最後の巻までゆっくりとお楽しみくださいね!こんな感じでやってます!

  1. 一の巻 ドキュメンテーションっていったい何?なんで英語よ?( この記事を読む
  2. ニの巻 ドキュメンテーションってどんなもの?Part1 ( この記事を読む)
  3. ニの巻 ドキュメンテーションってどんなもの?Part2 ( この記事を読む)
  4. 三の巻 プロジェクト学習とドキュメンテーションの二人三脚の旅( この記事を読む)
  5. 四の巻 くろねこ先生のドキュメンテーションちょっとお見せします(今回はこの記事!)
  6. 五の巻 オーストラリアの怖~い監査とドキュメンテーションのお話(この記事を読む)
  7. 六の巻 実は日本幼稚園教育要領さんは一番大切なパートナーだった!(この記事を読む
  8. 七の巻 どうやって日本の幼稚園で実践できる?指導計画に組み込まれたドキュメンテーション(この記事を読む)
  9. 八の巻 「こういうことする時間くれんならやってもいいよ」先生たちの時間戦争と勝算 (この記事を読む)
  10. 九の巻 「やらなきゃ実践」から「やりたい実践」への楽しい脱皮 「ああ、先生やってて良かった!(この記事を読む)

日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習~子供が主体の学びの冒険シリーズ~では幼稚園のプロジェクト型学習について、メルボルンの幼稚園を拠点としたくろねこ先生の実践例を紹介させていただいています。シリーズの初回記事のリンクはこちらからどうぞ.

 

 

それでは…今日のテーマに行きましょう!

4の巻 くろねこ先生のドキュメンテーションお見せします

はじめに…

これまでも、プロジェクト学習やドキュメンテーションの楽しさを読者の皆さんとシェアしたくて、その都度、話のトピックに合わせて私のドキュメンテーションをお見せしてきました。今回の記事では断片的ではなく、一つのグループ学習のストーリーを追う形で、私の子供たちの学習物語をお見せしたいと思います。

くろねこ先生 ファイル型ドキュメンテーション*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

私のドキュメンテーションについて始めにちょっと一言。私はメルボルンで20年近く現地の幼稚園の子供たちを教えてきましたが、それでも英語が完璧なことはありません。なので英語が堪能な方はドキュメンテーションの中に私の英語の間違えを見つけたりするかもしれませんが、笑って見過ごしてもらえればと思います。現地で教職に就くと英語でへこむことは多々ありますが、そこは技術と気力で乗り切れます笑。ま、多民族国家のオーストラリアですから、基本みんな違う英語を話しそれをお互いに受け入れながら仕事をします(日本もいずれ「日本語」をベースにそうなるんでしょうか)。

 

 

 

幼稚園グループプロジェクト「小さな種の旅」の背景

今回皆さんとシェアするのは私が2016年に公立(親の運営委員Parent committeeによって経営される地域の)幼稚園の4歳児クラスでやった The journey of a seed「種の旅」というグループプロジェクト学習です。グループは週2回、8時30分から4時までのクラスです(日本のように毎日クラスではありません)。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

グループプロジェクトThe journey of a seedは、途中学習トピックの流れが変化しましたが、結果的には2つの学期(20週間; 1セメスター)を丸々使った、幼稚園のプロジェクトとしては長いロングタームプロジェクトに発展しました。

 

ドキュメンテーションのスタイル

私は基本的に、子どものリサーチワーク、収集活動や実験記録、パフォーマンスや会話、その他全てのオリジナルの学習証拠Learning evidenceを写真に撮ってファイル型ドキュメンテーションにまとめ、1~2週間ごとにそれを親にe-mailで送っていました。

Photo by Marek Levák on Unsplash

2016年は、私がこの形式でドキュメンテーションを親と共有した最後の年になり、その後はオンラインプラットフォームを使うことになりましたので、The journey of a seedは私が本当に自由な書式でドキュメンテーションを楽しんだ最後のグループプロジェクトとなりました。

オンラインプラットフォームを使うと記録はすべて幼稚園側がデジタル保管することになりますから私の手元には残りません。またオンラインプラットフォームでの共有はそこに示される学習記録は限られた数になってしまいます。なのでThe journey of a seedは私の手元に残った完全記録の最後の紙面ドキュメンテーションになり、私にとって大切な宝物となりました。

 

 

The journey of a seed 小さな種の旅プロジェクト

それではドキュメンテーションを開いてみますね。

 

プロローグ 不思議な昆虫を見つけた!

お話は1学期の第2週(ギンギンの真夏です!)から始まっています。事の始まりは子供達が園庭で見つけた一匹の見慣れない虫でした。子供達は待ちわびていた幼稚園が始まり、幼稚園で見聞きする全ての事が新鮮、好奇心でいっぱいの時期です。

私はすぐに子供の発見をその日のグループのお話トピックに取り上げてみました。話し合いの結果、みんなそれぞれ家に虫の写真を持って帰って、それが何という虫なのかとりあえず調べてみようってことになりました。

子供が持ち帰った用紙。「この虫は何かお家の人と一緒に調べてみようという事になりました。ご協力お願いします。」

みんなのリサーチの結果、翌週にはどうやらそれはBottlebrush Sawflyなのではないか、という事がわかりました。またあの虫を見つけるにはどこに行ったらいいのか、という話になりました。

子供たちがリサーチしている間、私もこの虫について下調べをしました。このBottlebrushというのはオーストラリアの太古からある木の一つで、花がボトルを洗うたわしに似ていることからそう呼ばれているようで、メルボルンでも公園から住宅の庭先にまでよく目にする木です。

Bottlebrushの花 Photo by Lynda Hinton on Unsplash
ちなみにこれがボトルを洗うたわしです

Sawflyは太古からオーストラリアに生息していて、子供たちが見たものは主にBottlebrushの木の葉を食べるのでBottlebrush Sawflyという名前がついているようです。

なので虫の名前がBottlebrush Sawflyと分かったら、私は子供たちはすぐにBottlebrushの木のまわりにこのSawflyがいると気が付くのかなと思っていました。が、それどころか、子供たちはBottlebrushという木についてもあまりピンときてない感じでした。Bottlebrushの木は園庭にだって当たり前の顔して植わっていたのに。

 

その不思議な昆虫と「たわしの花」が何かをめぐって

なので、まずはBottlebrushの木について子供たちが知ることから始めてみることにしました。子供たちはキッチンにあるBottle brush(たわし)は何かは知っていました。そこで私はちょっと面白いことを子供に提案したのです。みんなの知っているBottle brushをお家から持ってきてBottlebrushの木を作ってみよう!というわけです。

親御さんへの手紙 「キッチンのボトルたわしを持ってきてください」

次のクラスの日の登園時間になると、私は入口の所に「木のスタンド」を用意して子供たちを待ち構えました。そして来た順から子供が持ってきたたわしをその木にぶら下げます。親たちは興味津々です。今思うと「一体なんだこの日本人教師は」と思った親もきっといたでしょう笑。子供もちょっと半信半疑。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

ここでちょっと考えなかった展開がありました。子供たちの中に二人ほど本当のBottlebrushの花を持ってきた子供がいたのです。これは都合のいいハプニングでした。この子供たちはこの花を持ってくるときに親に「ほら、これがBottlebrush flowerよ」と言われたのかもしれません。

親が幼稚園のグループプロジェクト学習に対して直接答えを提示することがないよう、入園前からお願いしてありましたが、一人二人こうゆうこともあると、実は学習展開に都合よく拍車をかけることもあります。

みんなの登園の後、グループになって出来上がったへんてこな「たわしの木」を眺めてみた時、数人の子供が、その二人が持ってきた本物のBottlebrush flowerに気づきました。そして子供たちはBottlebrushというのは「たわしが咲いてるみたいな木」という事にやっと気が付きました。そしてこの木はいつもいろいろなところで見かける「あの木」だという事も気が付いたのです。

「先生幼稚園の庭にBottlebrush treeがあるよ!」「やっと気が付いたかい」*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

ここまでくると、子供たちはすぐにBottlebrush SawflyはBottlebrushの木の周りに生息しているかもしれない、と思いつくかもしれません。私はメールを通して親御さんに、週末に子供たちと自然散策をして、出来たらBottlebrushの木を見つけて観察してみることを提案してみました。

ドキュメンテーションには子供たちのレスポンスが明確に記録されていて、家族との自然散策の体験が子供たちにとってとても意義があったことが示されています。

ある子供は、家族との自然散策の時、Bottlebrushの木の周りでSawflyを観察できたそうで、その写真を持ってきてくれました。この写真はこの後の創作プロジェクトに大変役に立ちました。子供はそんな経験を通してどんどん自信をつけていきます。

 

「たわし木の虫」をみんなで一緒に作る!

どの子供も一人残らずBottlebrush treeとBottlebrush Sawflyのつながりについて明確なイメージができあがってきました。

これは、子供自身が提案した次の学習展開でもかなりはっきりしてきました。一人の子供が「Bottlebrush Sawflyを作ってみようよ!」と提案したのです。他の子供はこの素敵な計画にすぐに賛同しました。自分たちが主体であるという事を感じ始めて楽しくなったようでした。

Bottlebrush Sawfly作りでは子供は私と一緒に写真を見ながらSawflyの体のつくりを(子供なりに)じっくり考察してゆきます。その過程で私は、子供たちが プロジェクトを通して「観察して考察すること」を確実に経験していることを理解できました。ドキュメンテーションを読み返すとその時の私の小さな驚きが伝わってきます。 工作を始める前に、まず絵を描いてみようと提案してみんなで描いてみた時のことです。

「今日は誰も『僕描けな~い』と言いません。彼らの手は躊躇することなく、子供たちの 絵のアウトラインは、彼らのダイナミックな手の動きによってたちまち出来上がりました。みんながプロジェクトに集中し、誰も違うものを描いたりもしません。…」

工作の過程を記録したドキュメンテーションにはまた、子供が持ってきた Bottlebrushの花の上にいるSawflyの写真を見て、虫が何をしているのかについて考えを巡らせている様子がそのまま記録されていました。何人かの子供は Bottlebrushの花の先端の黄色い部分が花の蜜でそれをSawflyが吸っているのではないかと推測しました。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

後日、園庭で数人の子どもが「ポンポン」のような花を見つけてその花びらの先端にも黄色い部分があることに気づくと、それをなめて「これが蜜かも」と話します。「そうかなあ?」ととぼけた私は、これがプロジェクトの学習として展開しなくても、これから遊びを通して知る機会があると思い、あえて記録しておきました。

工作活動は、子供たちに「観察して考察する」を経験する大変良い機会になっていることがここでもわかります。

 

工作で同じものを作るのは一斉保育だからNG?

このプロジェクトは1学期でしたから、通常私は「学習冒険の楽しさを体験するイントロダクション」を一番の目標にします。なので、子供の提案でBottlebrush Sawflyを作ろうという事になったときは みんなで一緒に同じ道順に沿って創作活動を体験するのがいいのではないかと判断しました。

こう書くと「一斉保育」でやる工作を思い浮かばれる方もいると思います。が今までの記事でお話ししてきたように、教師の意図的アプローチがあっても、プロジェクト学習の展開はあくまでも子どもが主体です。なので、創作活動は必ず「話し合い」が展開の主軸です。

Sawflyの体を作るにはどんな材料が必要か、色はどうやってつけるか、足は何本で何を使ったらいいのか、透明の羽はどうやって作るか。さらに使う材料はどこにあるのか、何を家から持ってこなければならないのか。これらのことを一つ一つの段階で子供たちと話し合って決めてゆきます。こうしたことを一緒に体験してゆくことで、子供は自分たちの主体的な学習参加を実感するようになるわけです。

Photo by Juan Encalada on Unsplash

また、イントロダクションとしてみんなで同じ過程を同時に体験することによって、教師は一人一人の子供の発達過程をグループの中で相対的に観察したり、それぞれの子供同士の関わり方や教師へのアプローチの仕方の違いを把握できたります。これがこの後1年間の個人の学習計画を立てるのに非常に役に立つわけです。

Sawflyを作る過程で、ある男の子が、Bottlebrushの花をペイントするときはBottle brush(たわし)を使うのがいいね、とお家でお母さんと話したのだそうで、それをグループの話し合いの時提案しました。このことで、子供たちは私から「SawflyのまわりにBottlebrushの木も作ろうよ」と提案されます。

ドキュメンテーションには、子供たちが先生の提案や技術的なサポートをもらいながら創作活動に真剣に取り組んでいる様子が写真によって記録されています。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

 

 

小さな展示会を開いて「学びの旅」をシエアする

そして数週間をかけて完成した「Bottlebrushの木の周りにいるBottlebrush Sawfly」は1学期の最後の日にミニエキシビションと称して、子供たちの全ての学習記録や創作過程の写真とともに展示され親とシェアされました。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

それぞれの子供の創作過程は、グループへの参加の様子も含めて個人のドキュメンテーションに記録した記憶がありますが、このグループプロジェクトのドキュメンテーションには、写真の他にはあまり記録されていないようですね。

どうしてかと考えてみたのですが、実は、子供たちの話し合いが、大変意義のある方向へ展開しそうだったので、Sawflyの創作過程の記録はほどほどにしたのかもしれません(常に「書き過ぎ」が私の反省点でもありましたので笑。)

 

種の実の焦げ跡から山火事そして先住民文化の話への展開

その新しい展開というのはこうです。

週末の家族との自然散策のとき、何人かの子供はBottlebrushの写真の他にも、実物の花や葉っぱ、種の実(Seedpod)を拾って持ってきてくれました。

このグループのクラスの日には、私は毎回必ず子供が持ってきたそれらの自然の恩物をテーブルの上にだして、子供が自由に観察出来るようにセッテイングしていましたが、子供たちがこの種の実が黒くて焼けている感じだったことに気が付いたのです。そしてそこからBush fire山火事の話に触れることになったのです。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

Bush fire山火事というのは、オーストラリアでは誰もが身近に感じる自然災害です。乾燥と気温の上昇の中、葉の摩擦などが火種となって自然発火すると、その火はユーカリの木の樹脂に刺激を受けてたちまち広範囲に広がり人為的な消火は容易ではなくなります。

オーストラリアの山火事 Photo by Matt Palmer on Unsplash

Bush fireはオーストラリア原住民アボリジニの生活に中に常に身近にありました。しかし、彼らには超越した長い歴史があり、このBush fireをうまくコントロールする方法でさえも完全に心得ていました。それはBush Burningです。

アボリジニの人々は定期的にBush森林の一部を燃やすことで自然発火を防止し、自然の生態系を回復させるのです。種の実は加熱によって勢い良く割れ、燃えてクリアになった地面に落ちて根付き、やがて芽吹き育ちます。こうして森は定期的に生まれ変わり、常に健康な状態に保たれていたわけです。

山火事の後の森林の生まれ変わり Photo by Photoholgic on Unsplash

子供たちが、既に割れて空っぽだった植物の種の実が焼けて黒くなっていたことに気が付いた時、私は、オ-ストラリアのネイティブの木であるBottlebrushの話を、ぜひこのアボリジニのBush Burningについての学習冒険に展開させたい!と思いついたのでした。

ドキュメンテーションにはこの思い付きについて大げさな表現で書いてあります笑。ちんぷんかんぷんな英語ですが興奮度が伝わって来ます笑。

「子供たちの話が、私が考えていた方向に向かい始めたなんて、なんて素晴らしいのでしょう!」

 

新学期のプロジェクト学習継続のための指導計画

さて、2学期になると、まず指導計画を作成してファイル型ドキュメンテーションに加えます。それがこれです。

かなりアバウトに書かれています。日本でプロジェクト学習の指導計画をどう提示したらよいかの提案はこの記事に書きましたが、この提案の元になっているがこの私の指導計画です。プロジェクト学習はどのような展開になるのか教師にだってわからないのですから、とにかく必要最低限のことだけをアバウトに記しておきます。

私の指導計画は今読み返してみても、すべてがニュートラルに書かれていて全く具体的ではありません。けれど監査などでは一度もそれについて指摘されたことはありません。なぜならドキュメンテーションに毎回の学習展開がきちんと記録され「計画→ アクション→ リフレクション→ 計画」というサイクルがきちんと提示されているからです。これについては次回の記事「五の巻 オーストラリアの怖~い監査とドキュメンテーションのお話 」でじっくり書きましょう。

 

自分たちが学びの主体であると知った子どもの次の学習展開は?

ではBush Burningのお話がどのようにグループプロジェクトとして展開されたか、ご紹介したいと思います。

Bottlebrush Sawflyのプロジェクトは、1学期末にミニエキシビションをもって終了しましたが、子どもの学びの冒険は2学期になるとその学習経験のコンテニューストーリーとなっていきます。

Bottlebrush Sawflyのプロジェクトで自分たちが学びの主体であることを自覚するようになった子供たちは、2学期になるとSawflyプロジェクトがきっかけとなった話のトピックを、大変意義のある学習へと展開させていきました。ここにはもちろん教師(私)の意図的なアプローチとサポートが必須でしたが、それこそが幼稚園教師の存在意義です笑。

 

秋の到来と「種の実」の謎の解明、テンポの良い学習を展開させる

秋の2学期になるとすぐに子供達は園庭で落ち葉を見つけたりして、植物の変化に気づき興味を持ちました。これを受けて、私はいろいろな木の種の実を秋の農作物や紅葉と共にテーブルにディスプレィしました。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

子供たちが、このディスプレイテーブルで種の実や農作物を触ったり匂いをかいだりして観察を楽しんでいるとき、彼らは1学期に観察したBottlebrushや他の木Bankisia、松ぼっくりなどの実の種がぱっかり開いていたことに気が付きます。また同じ種の実なのに一つは閉じていて片方は茶色く硬くなって開いていたりします。何でかと私が不思議がると、男の子の一人が「なんでかっていうとそれはgrowingしてるからだよ」と言います。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

それがどういうことかを子供たちにもっと探ってもらうため、私はここで再び週末に家族で散歩に出かけ「閉じてる種の実」と「開いてる種の実」を見つけて持ってくるように提案します。ここは私が展開の主導を取りました。なぜかというと、子供達は1学期に「自分たちが知りたいことを知ろうとする」という事を経験してきていました。

次の段階では、今度は子供が「自分たちが知りたいことを知ることができる」経験をする方向にもっていきたいわけです。なので子供をテンポの良い学習展開に乗せてあげる必要があり、彼らの「不思議だな」を学習のきっかけに展開させる瞬間は迅速でなければならないからです。これによって招待された学習の旅を経て、子供たちはその「不思議」の答えを知り、今度は「発見した喜び」を感じることができるわけですね。ここに到達するには、始めたからもたもたしているわけにはいきません。

親への手紙「閉じている種の実と開いている種の実を見つけて持ってきてください」

 

想像がきっかけとなる学習展開

子供達は家族の協力を受けて、「閉じてる種の実」と「開いてる種の実」を持ってきました。

持ってきたいろいろな種の実を割ってみたりして、みんなで中身を観察し気が付いたことを話し合いました。自分たちでこれらの木の実を集め経験をした子供達は、同じ木からとれた種の実には閉じているのと開いているのがあり、成長過程で変化するのだという事を確認できたようでした。

が、閉じてる種の実には種がぎっしり詰まっているのに、開ききっている種の実の中には種は入っておらず、空っぽであることに気が付きます。私が「どうやって開いて、種はどこに行ったんだろう」と問いかけると、子供から「Bottlebrush Sawflyが壊して穴をあけた」「妖精がきて持って行った」などの声が上がりました。「想像する楽しさ」をみんなで経験します。

*プライバシー保護のため文字と写真はクリアに表示されません

 

種の実の真実を探る「小さな種の旅」のプロジェクト学習(1)仮説を立てる

さあ、ここから子供たちの学びの冒険プロジェクト「小さな種の旅」が本格的にスタートしてゆきます。

Photo by Anuj Yadav on Unsplash

ここで、私はあえてこの学習の旅でテーマにする「種の実」を、大きくて観察のしやすい松の実(松ぼっくり)に絞りました。子供たちが松ぼっくりの中の種に興味を示し、観察を楽しんでいたこともこの種の実を選んだ理由です。

私と子供達は話し合いの中で「こんな風に松ぼっくりの実が開く」という「想像」を「仮説を立てる」という過程に発展させていきます。この話し合いで、子供たちの思考に、想像するという事と現実的な事象の理由を考えるという事の間に「ライン」が現れてきました。「どうやって種の実は開くか」とういう問いかけに対して、子供たちは次の4つの仮説を立て、それは驚くほど現実的でした。

仮説1高い木から落ちて地面にあたって割れる

仮説2雨が降って濡れると割れる

仮説3乾いて割れる

仮説4熱くなると割れる

 

「小さな種の旅」のプロジェクト学習(2) 実証実験

そしてこれらの仮説を実証させるために、私は子供たちにどんなふうにな実験をしたらよいのかを問います。そして子供から出された提案をテンポよく、次々と試してゆきました。

Photo by Hasan Almasi on Unsplash

ドキュメンテーションには、「梯子に上って1メートル、2メートル 3メートルの高さから松ぼっくりを落としてみる実験」、「松ぼっくりを水に浸してみる実験」、「濡れた松ぼっくりを乾かしたらどうなるかの実験」、そして最後は「松ぼっくりの過熱実験(オーブンをつかいました)」です。

一つの実験の結果を見て、「種の実が開かないからじゃあ次の手を考えよう」というテンポの良い流れで4つの実験は進んでゆきます。一つ一つの実験で子供たちは「結果」を予測し、それを私がみんなの前で絵を交えて記録し、そして結果を記録してゆくわけです。ドキュメンテーションにはこの4つの実験の様子が記録されています。

そして、「乾いて熱くなると種の実が割れる」の結論が出ると、私たちは「なんで乾燥して熱いと種が出てくるのか」いう話合いになりました。子供たちの考えはこうでした。ここにも子供たちの楽しい想像性が表れていますが、言葉を変えて考えてみると実は的を射ています。

「松ぼっくりが開かないのは、寒いからじゃない?」「ちょっと怖いのかも」「ハッピーな時に開くんだよ!」

 

「小さな種の旅」のプロジェクト学習(3)親の参加による調査と結論

私は子供たちの考えが当たっているのかを、今度は一人一人の子供がじっくり探ってゆくために、親たちに子供たちの学習に参加してもらうことにしました。これが私が作成した「私とママ(パパ)の考えはこうです」を、絵と簡単な文書で書き込むための用紙です。子供達はこれを家に持ちかえりました。

子供たちの持ってきた「考えの図」はとてもユニークでしたが、話し合いの時に子供たちが想像したことにつながりがあるものがほとんどでした。そして、子供の想像を元にに、たくさんの親が真剣に、そして楽しく子供の「学び」の旅に関わった事がよくわかりました。「考えの図」を持ちよった日には、私は教室に子供たちの「考えの図」を簡単に展示しみんながそれぞれの考えをシェアできるようにしました。

私たちはいろいろな「考えの図」を見ていろいろな意見を知り、考えをめぐらせました。そして何人かの子供が親とリサーチした結果を受けて、クラスの子供たちはついに真実を知ることになります。松ぼっくりは熱によって割れて、熱によって乾燥した種は風に乗ることができるようになります。種は風に乗って移動し別の地に根付くのです。自分たちで実際に調査、仮説立てや実験を経験してきた子供達には、この結果は躊躇なく確実に理解できるものでした。

 

「小さな種の旅」のプロジェクト学習 (4) 自然と先住民文化とのつながり

そしてこの真実を知ったことで、私と子供たちは、先に触れた先住民アボリジニのBush burningについての話(火によって種の実が割れ新しい植物が育つこと)を再び始めるきっかけを得たのでした。子供たちのプロジェクト学習体験は、先住民アボリジニの「自然を敬い そして恐れ、その恩恵を受けながらそれ守っていくという、この地で生きてゆくための知恵」を理解する助けにもなったわけです。

Photo by Tim Umphreys on Unsplash

プロジェクトをしている2学期の間には 子供たちはもちろんプロジェクトの他にもたくさんの活動を経験しましたが、ビーチ沿いの森林散歩に出かけることもありました。その時には専門のボタニストに来てもらって子供たちとその昔先住民が残したBush burningの跡などを見ることもあり、そんなことも子供たちの学習をさらに盛り上げ学習の意義を深めました。(ちなみにBush burningは、先住民の知恵を引継ぎ現在でも自治体によって行われることがあります。だから子供たちの生活範囲で「焦げたような」種の実を見つけるのは不思議なことではありません。)

ボタニストと一緒にビーチ沿いの森林を散策

 

「小さな種の旅」のプロジェクト学習 (5) みんなで学びの冒険の喜びを共有する

ここまでの旅を終えた子供たちの頭はパンパンでした。私は2学期が終わる最後の2週間を、子供たちが獲得した「新しい知識」の解放に使うことにしました。プロジェクトの合間にやった「種の旅」の劇遊びを子供がとても楽しんでいたこともあり、私は子供たちが「学んだ事」を劇にして親たちと一緒にシェアすることを子供たちに提案したのです。

もちろん少し練習もしなければなりませんでしたが、子供たちのパフォーマンス「松ぼっくりの種の旅のお話」は素晴らしいものになりました。親が子供達と一緒に取り組んだ「考えの図」はすべて劇の一部としてスクリーンに映し出され、私たちはみんなで一緒にこの「学びの体験」をセレブレイトし、その旅を終えることができたのです。

ドキュメンテーションのすべての過程のなかで、このプロジェクトの経験を通して子供たちが何を学んだのかが明確にされ、私たちはみんなで子供の成長を確認することができたのです。

私にとっても、とても思い出深いプロジェクトの一つとなりました。

続きは次回の記事で!

虎の巻第4巻「くろねこ先生のドキュメンテーションお見せします」いかがでしたか?次の記事では、虎の巻第6巻 「 オーストラリアの怖~い監査とドキュメンテーションのお話 」をお送りします(この記事を読む)。ぜひまた遊びに来てくださいね。

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くろねこ先生の「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の学びの冒険シリーズ~ドキュメンテーション虎の巻全集~」次回もお楽しみに!

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