デジタル教材のお話

今回はオーストラリアの幼稚園のフレームワーク( 教育指導要領のようなもの)で枠組みされている、幼児に対する通信技術教育のありかたについて、私の実体験をもとに楽しくお話ししようと思います。

この頃は日本でも子供のスクリーン教材(デジタル教材)の賛否について議論されることが多くなってきたのではないでしょうか。いつの時代でも新しいものと古いものが入れ替わるときはエキサイティングな気持になる反面、戸惑いや混乱もあり、人間社会というのは本当に忙しいですね笑。子供たちがその移り変わる社会の中ででもで心地よく生きていけるように、その考え方や受け止め方の土台を作ってあげるのも、幼児教育に携わる私たちの大切な役目ですねーもしあなたがデジタル教材をどのように活用させて良いのか思いを巡らせているのであれば この記事が、ちょっとしたインスピレーションになるかなと思います。

教科書に描いた手書きアニメーションの思い出

子供の頃、自分で描いた絵が動いたらいいなあ思ったこと、ありませんか?私が小さかった頃はコンピューターやデジタルカメラなどありませんでしたから、アニーメーションを作ると言ったら、何枚もの絵をかいて重ねてペラペラめくって動く絵をみるという、クラシックな方法しかありませんでした。中学生の教科書を開くと、まあたいてい全部のページの下のコーナーのところに落書きがしてあったものです。「人間」がジャンプしたり、空を飛んだり、凝ったものだと、びっくり箱から怖いいものが飛び出して「人間」がきゃあと悲鳴を上げてドラマチックに後ろにひっくり返るとか、そんな人間の一瞬のアクションの一コマ-コマを、授業中に、先生の声をBGMにして非常に根気よく1ページごとに描いていったものです。自分が描いた絵が紙面から飛び出して動き出すのを見るのはちょっとエキサイティングで、退屈な授業を乗り切るには十分なエンターテイメントでした、。もし先生に見つからなければですけど (笑)。

デジタル教材へのチャレンジ

今のデジタル世界では、アニメーションを作るのなんて本当に簡単になりました。けれど、自分の子供が小さかったころは、アニーメーションどころか、ゲームをさせることも刺激を与えてしまうんじゃないかと、うさぎ君(息子)にはちょっと大きくなるまでデジタルから遠ざけていました。。

もう10数年も前のことですが、メルボルンの幼稚園で子供を教えていた時、ある朝子供の一人がお母さんのスマートフォンを使って、私にお気に入りのゲームを見せてくれたことがあります。子供は何か大切なものを私とシェアしたのがとても嬉しそうでしたが、デジタル難民の私はどう返事をしていいのかわからずにいると、その子のお母さんが

’Kuroneko, That’s so amazing!’

と言って私の顔をじっと見て,(信じられないという感じで)首を振って、

‘This is so creative and kids just use imagination. They can create everything in there! You can design a dress, building a house …’

何のゲームか忘れたけど、つまりそのお母さんの言うにはゲームの中で子どもがなんでもクリエイトできて素晴らしいというわけです。自分の子供がまだ小学生低学年だったの頃だったし、デジタル難民だった私にとっては、ちょっと半信半疑であったのを覚えています。やっぱり子どもが自分の手で触って確かめて作り上げることのほうが、子供の本当の想像力と創造と培い、絶対大切に決まってる、などと古い頭をもってこのデジタル世界に反抗的だったわけです。

オーストラリアの幼児教育フレームワークが先生たちのお尻に火を付けた!

ところが!忘れもしない2009年。オーストラリア政府が幼稚園教育に新しい枠組みを定め、それまでものすごいのんびりしていた初等教育のセクターでは急に物事が忙しく動きはじめました(というすごい強烈な印象がある)。このお話は、くろねこ先生の波乱万丈物語(リンクは下に貼ってあるので覗いてみてね)でもこれからおいおい話してゆこうと思っているけれど、まあとにかくオーストラリア中の幼稚園の先生のお尻に火がついちゃったって感じ。で、話はそれちゃったけど、この時政府が新しく定めたEarly Years Learning Framework(教育指導要領みたいなの)の中に、5 Learning Outcomes (まあ、教育目標って感じかな)っていうのがあって、その5つ目の項目として子どもの’Communication’について書いてあるんだけど、ここの最後の内容としてこう明記してあります。

”Children use information and communication technologies to access information, investigate ideas and represent their thinking”

直訳すると、「こどもは通信技術をつかって情報にアクセスし、アイデアを調査して彼らのの思考を表現する」となるけど、これじゃあチンプンカンプンなので、私なりに解釈するとこうです。「こどもが通信技術をつかって情報にアクセスし、自分たちのアイデアを探ったり、自分たちの考えを表現する(ことを目標とする)」。つまり、オーストラリア政府はここで、自国の幼児教育にテクノロジー、つまりデジタルを使った教材を導入して子どもがそれを使った表現活動をする事-これは例えばインターネットを使って知らない事柄を調べその情報をもとにして絵をかいてみるなんて言うことも含まれます。ーを、各幼稚園のプログラムに求めているわけなのです。

川に流されちゃった先生たちはすっかりデジタル愛好家!

Photo by Erik Dungan on Unsplash

この記念すべき2009年から、この国では、私たちデジタル難民世代の先生も、まるですいすい川に流されるようにデジタル ワールドに引き込まれてゆきました。もう、コンピューターが使えないなんて言ってられません。使えるようになってくると、あとはだんだん楽しくなってきますーこれは大人も子供もみんな経験することですね。こうなってくると、もう、’わあすごい’の連続です ー自分のアイデアがデジタル機能を通してどんどんビジュアル化することの感激はやっぱり、すごい!くろねこ先生は、やっぱり自分の手を動かした創造活動は子どもたちにとってものすごい重要だと信じているけれど、その子どもの作品を世界にポンと飛び出しような息使いで表現させてくれる、デジタル機能も、今の幼児教育には欠かせないなと、今は思うわけなのです。

デジタル教材を使った魔法のような素敵な学習の冒険

今では、オーストラリアでは(日本もだと思いますが)タブレット、パソコン そしてプロジェクターがなければクラス運営が成り立たないほど必須の設備になってきました。スクリーンで視覚的にも聴覚的にも刺激が強すぎるコンテンツを教材にすることは、児童心理学的にも一般心理的にもタブーです。が、そのコンテンツが、人がスクリーン越しでしか表現できないメッセージだったり、または自然素材の使用と融合させる創作活動だったりすると、そこから 魔法のような素敵な学習の旅が始まります。

自然素材が一番!葉っぱのアニメーション創り

さて、話をアニメーション創りに戻しますが、デジタル世界と自然素材を融合させる素敵な創作活動の1例として私が今回ご紹介したいのが「葉っぱのアニメーション創り」です。もちろん幼稚園で取り組む「表現活動」として、またはお家でお子さんと一緒に楽しむ創作活動として、子供だけではなく、先生もママもパパもみんな童心に帰って楽しめるおススメのアクティビティです。

やり方は簡単!みんなで秋の公園に出向いてきれいな秋の落ち葉や木の実などを拾ってきます。それを並べて絵を作り、その絵を少しずつ動かしながら1コマ1コマタブレットで写真を撮ります。、それを無料の簡単動画編集ソフトにロードしてショート動画を作ります。

幼稚園の子供たちは、この動画制作のすべてのプロセスに参加することができます。子供たちは、自然の中で落ち葉拾いをたっぷり経験した後、デジタル教材の醍醐味を経験します。どのように「葉っぱの絵」を固定させて写真を撮り、どのくらいの動きの幅とタイミングで写真を撮ったらよいのかを大人と一緒に考えなければなりません。また、動画編集では、マウスで写真素材をドラッグ アンド ドロップして並べたり、タイプしてテキストを入れてみたりと、問題解決、算数、文字、アート表現 、そしてデジタルテクノロジーなど、実にたくさんの学習経験をすることができるわけですね。まさに、 デジタル教材を使った魔法のような素敵な学習の冒険 だというわけです。

で、今回は私自身も、デジタルカメラを活用して、自然素材でアニーメーション作ってみました!そのアニメーション作りの旅をVlogにしたものがこちらです。 出来上がったアニメーションは素人できもいいところですが、自分がもし今のデジタル世界で生まれたのなら、きっとこんなことをして遊んだんだろうなあと思いながら、とても楽しい撮影ができました。自然素材とデジタル機能の素晴らしい融合です!大人だってこんなふうに遊んじゃいましょうよ ー今はだれでももってるスマートフォンで、どんどんやっちゃいましょう。わたしたちはみんな地球の子供たちです。 自然素材でアニーメーション作りー 心ほっこりEarth Children Vlog ‘Moving Leaves’のお話 はこちらから

デジタル機能を活用した指導案のアイデアは他にもにもいろいろあります

デジタル機能を活用した指導案のアイデアは他にもにもいろいろあります。デジタルカメラで自分たちの気になるものを撮影して、それをスクリーンに映し出してデスカッションに活用したり、グループアートのオリジナルデザインをインプットしてそれをベースしてにチームの創作活動をやりやすくしたり。またリサーチ活動にもデジタル教材は欠かせません。

Photo by Isi Parente on Unsplash

子供は、デジタル教材を使ってリサーチワークをすることで様々な情報を収集することができますが、そのプロセスの中でも自分でキーボードをタイプしたり、操作ボタンを使ってみたりなど、文字や数字、そしてIT知識の基礎を体験したりするわけです。 また、プロジェクターを使った光の模様作りライトテーブルの影絵遊びなどは、デジタル要素はあまりありませんが、そこにパソコンやタブレットを使う経験を加えれば(例えば作った模様をパソコンの画面に映し出してみたり、それでポスターを作ってみたり等々)、遊びの範囲が広がってゆきます。まさに、今のモダンアーテストさんたちが、デジタルを活用することで創造の世界が無制限に広がってゆくのと同じ感覚です。

(写真上)くろねこ先生 ライトテーブル設定の一例(ビー玉を使用することについては賛否両論があるが、遊ぶ前に子供達と安全についてお話しするきっかけともなる。結果、くろねこ先生のクラスでは事故は起きたことはありません。)

デジタル機能を活用した学習活動、注意することもあります!

しかし、幼児教育を目的とするならば、ここで注意しなけれがならないことは、スクリーン教材が決して「答えを出す道具」になってはいけないという事だと思います。リサーチワークにしても、アートワークにしても、デジタル教材は子供たちに「これが答えです」や「これが作るものです」を教えてくれるものであってはならないわけです。ここに幼児教育者の「子どもの学習パートナー」としての大切な役割があります。デジタル教材を適時にうまく活用しながら、子供が主体性をもって何か新しい発見をしてゆく、先生はその適切なナビゲーター、そして学びのパートナーになる必要があるわけですね。

私は、幼稚園でのプロジェクト学習がずっと実践しながらの研究対象でしたから、教師が「子どもの学習パートナー」であることについてはぜひ強調したいところです。なのでその方法の実践例の記事も出していています。興味あれば、ぜひのぞいてみてください。リンクはこちらです。

また遊びに来てね!

今回の記事、「自分の世界が動く!子供とデジタルワールドの愉快なパートナーシップ.オ-ストラリアの幼児教育事情」はいかがでしたが?ご意見や「こんな実践例が見たい!」というようなリクエストがあれば、ぜひコメント欄に残してくださいね。コンタクトページはこちらをクリック!またぜひ、心ほっこりEarth Children Blog に遊びに来てくださいね

また、くろねこ先生は、「プロジェクト学習を自分の指導案にぜひ取り入れてみたい!」という先生方を、メールを通してサポートさせていただいています。あなたとあなたの生徒さんの実際の会話を聞きながら、どのようにプロジェクト学習を進めていったらいいのかを、メールでの会話を通して一緒に探り出していきます。ご興味がある方はこちらをクリックしてくださいね

Reference: The Early Years Learning Framework for Australia by Department of Education, Skills & Employment, 2009,https://www.dese.gov.au/national-quality-framework-early-childhood-education-and-care/resources/belonging-being-becoming-early-years-learning-framework-australia

 

こんなお話もあるよ!

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