もくじ

幼稚園教育要領。

ちょっと初めに…

こんにちは、メルボルンのくろねこです。ロシアのウクライナ侵攻から1か月以上もたってしまいました。世界中の人にとって大変ショッキングな出来事ですが、子どもとともにある仕事をしている私たち教師にとっても、子供が受ける戦争の影響は、教育の未来を脅かす大きな影となり憂いとなっていますね。どうか一日も早く戦争が終わって、非難している子供たち、そして世界中の子供達の生活に安全と平和が戻ってきますように…

さて、今回は…

日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の学びの冒険~ドキュメンテーション編 虎の巻第6巻「実は幼稚園教育要領さんは一番大切なパートーだった! 」です!この ドキュメンテーション編 虎の巻では、9巻を10回の記事に分けて、プロジェクト型学習には欠かすことのできないドキュメンテーションの役割とその取り組みについて読者の方と一緒に考えています。まだ前回の記事を読んでない方はこちらから!

またちょっとその前に…

他にはない深掘り思考の旅、気楽で呑気なのに真剣でかつ情熱的、とってもユニークなくろねこ先生のこのオリジナルシリーズは こんな感じでやってます!

  1. 一の巻 ドキュメンテーションっていったい何?なんで英語よ?( この記事を読む
  2. ニの巻 ドキュメンテーションってどんなもの?Part1 ( この記事を読む)
  3. ニの巻 ドキュメンテーションってどんなもの?Part2 ( この記事を読む)
  4. 三の巻 プロジェクト学習とドキュメンテーションの二人三脚の旅( この記事を読む)
  5. 四の巻 くろねこ先生のドキュメンテーションちょっとお見せします(この記事を読む)
  6. 五の巻 オーストラリアの怖~い監査とドキュメンテーションのお話 (この記事を読む)
  7. 六の巻 実は幼稚園教育要領さんは一番大切なパートナーだった!(今回はこの記事!)
  8. 七の巻 どうやって日本の幼稚園で実践できる?指導計画に組み込まれたドキュメンテーション(この記事を読む)
  9. 八の巻 「こういうことする時間くれんならやってもいいよ」先生たちの時間戦争と勝算 (この記事を読む)
  10. 九の巻 「やらなきゃ実践」から「やりたい実践」への楽しい脱皮 「ああ、先生やってて良かった!(この記事を読む)

また、「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習~子供が主体の学びの冒険」では幼稚園のプロジェクト型学習について、メルボルンの幼稚園を拠点としたくろねこ先生の実践例を紹介させていただいています。シリーズの初回記事のリンクはこちらからどうぞ.

それでは今回のテーマに行きましょう!

「 実は幼稚園教育要領さんは一番大切なパートナーだった!」

さて、今回はメルボルンの幼稚園先生くろねこが、あえて日本の幼稚園教育要領をちょっとだけ勉強してみようという チャレンジングな記事にしてみました。私が日本の大学で勉強した30年前と今とでは、幼稚園教育要領はどのように変化したのでしょう?そして本当に幼稚園教育要領の枠の中で、くろねこが提案するプロジェクト型学習とドキュメンテーションの導入はできるのでしょうか?

Pixabayからの画像

先生方へ;この記事は、幼稚園教育要領の趣旨を勉強しながら日本の幼児教育にプロジェクト型学習を導入することができるかを考察してみようというものです。保育園で3歳以上を教えられている先生には保育所保育指針というのが法律上の基盤になると思いますが、その内容は3歳以上の保育では基本的に幼稚園教育要領と同じようなので、この記事をお読みくださるときは、幼稚園教育要領のところを保育所保育指針に置き換えて読んでくだされば、と思います。学習指導要領についても触れていますが、子供を育てる姿勢は国を挙げてのことですから、そのルーツは一致するものがあると思います。)

日本の幼稚園教育要領とそのカッコイイパパ、学習指導要領(?笑)

ちょっと、結論を先に書きますね。くろねこ先生が思うに、「幼稚園教育要領の枠の中での実践」という観点から見ると、日本の幼稚園でのプロジェクト型学習の導入は正直かなりフィットしているような気がします。特に、2018年の改訂版は、プロジェクト型学習の軸ともなる「子供の主体的な学習」を全体的に推し進めているような感じです。

BessiによるPixabayからの画像

皆さんにとってはもうなじみ深いでしょうが、例えば、幼稚園教育要領の親である学習指導要領を見るとまずババ~ンと私の目に入ってくるのは、青空に飛ぶ黄色い鳥たちと

「生きる力 学びのその先へ!」

というキャッチフレーズ。かっこいい!(笑)。私は日本人ですからこういう母国語で迫られるとつい「おお!」と感激してしまいます。これは、日本教育のウイークポイント「詰め込み教育」からの脱皮宣言のいよいよクライマックスですかねえ。生きる糧にできる「学ぶ力」を育てるってことでしょう?

学習指導要領「生きる力 学びのその先へ!」のイメージはまさにこれ!Photo by Gareth Davies on Unsplash

あまり評価が良くなかった「ゆとり教育の導入」を含めた1990年代辺りからの教育方針の模索がとうとう大切な最終段階に入ったような印象です(なのでゆとり教育は決して無駄じゃなかったはず!)。日本の教育文化の観点は、様々な試行錯誤に時間をかけながら、30年前とくらべれば大きなな変化を遂げてきたような気がします。

「んな!’生きる力を育てるっ’ なんて、ただの紙に書いてあるだけの決まりごとやんけ!現場はそんなこと言ってられない火の海なんでい!」

な~んて、これを読んでこんな風に言ってる誰かの顔が思い浮かびます苦笑。

わたしが働いてる保育園はブラック企業、なのに なにその理想論?

確かに、日本のソーシャルメディアをいろいろ見てみると、「わたしが働いてる保育園はブラック企業」なんていうのが頻繁に目に飛び込んできて、「理想論なんかかましてる隙も」なさそうです。

それに、「ブラック」じゃなくても日本の現場ははかなり厳しそう(オーストラリアの幼児教育も実は違う面でクライシスだけどけど)。現場が過酷だと言う背景には教師の配置基準の与えるインパクトもあるんでしょうか?クラスの人数が多すぎて理想の教育ができない、みたいな。 熱心な先生程、この壁にぶち当たりそう。

sergiophotoによるPixabayからの画像

幼保の職員配置基準に打ちのめされて

COLOURFULという幼児教育情報サイトの記事「幼稚園教諭の配置基準~ひとクラスの子供の人数」を参考にすると、日本の幼稚園は1学級35人以下が原則で、1学級辺り教師が1人(保育所保育指針では30人で保育士一人)、だそうですね。

Facebookでいつかどなたかに質問させていただいた時教えていただのによると、この基準は基本的には私が日本の大学を卒業した30年ほど前と変わっていなんだそうです。

35人の幼児に先生1人ってのは、明らかに多すぎですよね~、う~ん…

Pixabayからの画像

ちなみにオーストラリアはこうです。

基準はきっちり年少も年中(年長はなし)も11人までの子供に教師は一人。33人まででも教師は一人でよし、ただし子供11人に対してスタッフ1人が厳重原則(つまり33人の子供には教師一人と他2人の保育士または準保育士が必要ていうことです)。

前回の記事(こちからチェック)でお話ししたように、オーストラリアは2009年の教育指針の導入によって大きな飛躍を遂げました。職員配置基準も改革の一つであり指針導入に先駆けて実現したものでした。

人口数のスケールが日本と比べて桁違いに少ないですからこういうことができるんでしょうが、ま、かなり恵まれているとは思います。

ですが、日本の職員配置基準についても、実際はどうなのかをもうちょっと見てみましょう。

日本の職員配置基準のトランポリン的な柔軟性

「YAHOO!知恵袋JAPAN」や「教えて!goo」のサイトで何人かのお母さんたちの投稿を見て調べてみると、実際には年中年長のクラスで、大体15~25人の子供を教師一人で教える、というのが一般的だという印象を受けました。枠が広いですね。

日本の基準は「教師一人に対しては35人を上回ってはなりません」という事なわけですから、つまり25人を先生二人で教えたり、15人を一人で教えたり、園によって大分違うってことでしょう?

Jupi LuによるPixabayからの画像

保育園ではどうでしょう?私が30年ほど前日本で横浜市立の保育園に勤めていた時は、3歳以上のクラスの先生は25人に一人だったと記憶しています。が、0歳児のクラスは乳児3人に対して保育士が1人でした。コレかなりいいコンデションなんでしょうが、調べてみたらそれは横浜市の指針なんだそうですね。つまり日本ではその自治体やそれぞれの園のニーズや方針によって決めてよいってことですね。トランポリンみたいに柔軟性があります笑。

一昔前はオーストラリアの子どもはみんなこんなトランポリンを持ってた(笑) FotoRiethによるPixabayからの画像

オーストラリアの基準ではあまり融通がききません。4人の3歳未満児に一人の保育士、11人の3歳以上の子どもに教師が必ず一人ついて(別に10人に一人でも9人に一人でもいいんですが、そんな余裕は普通ありません。特に民間保育園の経営者は一人の幼稚園教諭の高い給料を払うだけでもひいひいです。)いい感じですが、その代わり、33人のクラスで職員は3人というのも多いんです。みなさんは、33人で先生1人とアシスタントスタッフ2人って聞くとどんな印象がありますか?

プロジェクト学習とトランポリン的職員配置基準

ここからは、日本ではだいたい20~25人に先生が一人というのが一般的であるというのと、そして、しかしそれでも、日本の現場はかなり厳しいということを理解し、それを前提にお話します。

実は、幼児と一緒にプロジェクト型学習を楽しもうって時は、オーストラリアみたいな職員が3人のクラスよりも、先生一人のグループのほうが、うまくいくんです。これは、くろねこ先生が20年間、いろいろなタイプのクラスを教えながらプロジェクト学習の方法を模索してきて得た実感論です。

これでも絶対うまくいく!
Piyapong SaydaungによるPixabayからの画像

なぜかと言うと、今までの記事を読んでいただくとわかりますが、プロジェクト学習っていうのはあくまでも「子供が主体」なので、「子供が自分たちで話し合って決めて一緒に冒険に出る」っていうそういうシロモノです。なので、まあ、30人は多すぎにしても、20人くらいのクラスなら、先生が2人で舵取りをするよりも実は一人の先生が舵取りするほうがほうが効果的なんです。

瓶のなかだけど舵取りうまくいってる?
Александра ТуркинаによるPixabayからの画像

なぜかというと、先生が一人の方が、子供の主体的な活動が効果的に促され、そしてそれによって子どもの自立心が養われるという事です。私が今までの実践で実感してきたことですが、これは日本の先生方も感じたことがあるのではないでしょうか?

先生は一人だけどチームワークは強硬な日本幼稚園の教室

「個」の教育をもっとも重要視するオーストラリアでは実は子どもの「自立心」は結構希薄だったりします。子供の「泣きたい」という個の感情を尊重するあまり「泣き止んでハッピーになる方法」を教えないで、「かわいそう」と言っていつまでも抱きかかえているのがオ-ストラリア幼児教育の現状でもあります(イメージ壊れちゃったかな笑 ∸ でも正直なところ、だから11人に先生が一人つかなきゃやっていけないんでしょう苦笑。ちょっと卑屈的な考察ですが、間違えなくそういった文化的な見えない背景もあると思います)。

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一方、日本のように「調和」を大切にする文化の中にあっては、子どもの自立心を養うことが重要になってくる場面が多々ありますよね。日本の教育現場は「先生は他の子のを手伝ってるんだから僕は一人でやってみよう」という自立心が芽生えやすい環境でもあるんです。

そして日本ではそうゆう教育的設定が社会で認識されています(オーストラリアでそういうことがあると、必ず「なぜあの子供を手伝ってあげないんですか?」と茶々がはいり、現場はハチャメチャです)

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また、これも実感されてる先生も多いのではないかと思いますが、先生一人のクラスでは、先生と子供の間の信頼感も増します。だって、先生が一人なので「頑張って自分でやってみてね」ってなると、子供も「自分でやろう」ってなります。すると、それがうまく相互作用して、「私の子供達ならきっと自分でできる」と教師は子供を信頼できるようになり、子供は信頼されているのがうれしくなってそれが自信につながります。これが素晴らしい信頼関係を築く結果となるわけです。

こうした信頼関係を土台にして育まれる子どもの自立心は、プロジェクト学習ではとても大切です。だって、子供はみんな自分たちが主体の学習冒険に繰り出して行かなきゃならないわけですから。

日本の子供はすごい!論~ 自立心と道徳観念

なので実は、子供の自立心の芽生えを大切にする日本は、グループプロジェクト学習を導入しやすい、そんな教育文化が既に存在しているってことになるんです。

「日本の子供は自立心があってすごい」ってのは、くろねこだけが確信してるんじゃなくて、海外ではよく見かけるコメントです。例えば、何人かの外国人Youtuberが「日本の子供はすごい!」というドキュメンタリーを公開していますが、皆さん見たことがありますか?

それは例えばこんなことです。日本は安全ですから、私立の学校に通う小さな子供が電車に乗って自分で学校に行く事がありますが、これは他の国の人から見ると驚きでしかありません。また、子どもが教室の掃除を自分たちでやったり、登園時に帽子をとってきちんと先生に挨拶したり、靴を履き替え、カバンをロッカーにしまって、大人の手を借りずに体操着に着替えたり、日本人にとっては当たり前でも、他国の人にしてみれば、これはもう神業です。

また道徳観念も子供に浸透していて「やっていいこと」と「悪いこと」、「親切」と「迷惑」をきちんと理解していますね。誰かがお財布を道端に落とすと、子供が「拾って届けてあげなきゃ」という行動に出るのも、日本教育の賜物です(海外ではまず起こりえません)。「子供をどんなふうにしたらあんな良く躾られるんだろう」と、海外で教える日本人くろねこ先生でさえも感動してしまいます。

くろねこ先生のところにやってきたすごい童~日本の幼稚園教育の凄さを見せつけられて

ちなみに、くろねこ先生も、何年か前に日本人の男の子をクラスにお迎えしたことがありますが、彼は、素直であどけないところもあるのに、「自分」という芯をしっかりもっていました。彼は日本から来たばかりで(つまりそれまで日本の幼稚園で教育されていた)英語はほとんど話さなかったので、他の子供に不思議がられたり、からかわれたりすることもあったけど、そんなことを気にする素振りもみせませんでした。

泣き虫の子供(オーストラリアの子供は基本的にどんなことでもすぐ泣きます笑)を横目に、自分のことはすべて自分でやり、グループの話し合いではいつも真剣に耳を傾けています。一番驚いたのは、彼の物事への理解力です。すべて英語だから会話がわからなかったことが多々あると思うのに、何を話しているのか自分で情報を察知してすぐに理解してしまいます。

Mari KanezakiによるPixabayからの画像

そのうち他の子供達は彼をからかわずに、一目置くようになりました。なので、英語は相変わらず話そうとしなかったけど、彼はいつも自分に自信があったし、楽しそうでした。私は、彼がそれまで受けてきた日本の幼稚園教育の優れた一面を見せつけられたような気分になったものです。

全ての日本人の子供がそうだとは、もちろん言いません。が、「自分でやる」が日本の子供たちにとっては「正しい生き方」として自然な形で認識されていて、この日本流の躾は確実に「文化」として浸透しているのだと思わずにはいられません。そしてそれが日本の子供たちの「生きる力」を養っていて、それは外国に来ると顕著に表れるのかもしれません。

Cock-RobinによるPixabayからの画像

実は日本人の子供だけではなく、アジア系移民のオーストラリアっこは一般的に理解力があり自立心が強いという共通した傾向があり(これは言わずともオーストラリアのどの先生も感じていることだと思います。)、その中でも、日本人の子供はさらに道徳観も持ち合わせているので無敵のような気がします。(わわ、ちょっとくろねこ先生、ひいき目になっちょるかい?!苦笑)

自立心とレッジオエメリア哲学のハーモー二ー

なので、つまりですね、日本の「35人に先生一人(実際には25人くらい対1人)」の基準っていうのは、実は、日本の子供のこうした自立心にも関係してるんじゃないのかと、くろねこは思うわけなのです。

日本の教育文化、道徳教育文化は、乳幼児のころから既に親によって、そして社会環境によって子供たちに浸透しています。私はだから、日本のこどもたちは年中さんになるまでに先生一人で教える大きなクラスの中でも自立心を持って幼稚園生活に取り組む準備ができているという認識が一般的なのだと思うのです。

35人に先生一人(実際には25人くらい対1人)っていう「ちょっと多すぎるんじゃないの」という基準は、実はそういった認識から生まれているのではないでしょうか。

先生がいて子供がいてこれも素晴らしいチーム
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

また、先ほども書いたように、子供はそういう環境におかれると不思議とさらにそういう力を発揮できるという事です。期待され信頼されるとそれが自立する自信につながってゆくわけですね。コレ、実はレッジオエミリア教育の “ Children are capable learners (子供たちは能力のある学習者)”という根本理念とも繋がる事ができそうです。

お馴染みのレッジオエミリア教育の “ カルナ リナルデイ博士

もちろん私は、今後この日本の職員配置基準が改善されてゆくことを願っていますが、ただここでは、今皆さんが直面されている現実も、実は考えようによってはいい効果を生んでいる事もあるっていう、そういう観点からお話させていただいています。

だからやってみましょうよ、プロジェクト型学習!

さて、日本の躾文化がいかに子供の自立心を助けるか、なんてお話をしてきましたが、ここでも「おいオイ、ここで日本の厳しすぎる躾教育文化を賞賛してどうするん?これが、日本の子供の主体性を消極させている原因やんか。プロジェクト学習ってやらをやるには主体性ってのが大事なんだろ、主体性が!」なんて声がまた聞こえてきそうですね。先に書いたように、この「子供の主体性」こそが 子供の「自立心」と相互して生まれるものなのです。

プロジェクト学習では、教師の信頼に基づいた子供の自立心が大切な軸になり、この軸が子どもたちの「主体性」をさらに活発にさせるわけです。

Sarah RichterによるPixabayからの画像

これが教師と子供の立ち位置を同レベルにさせ、そこから「子供が自ら考えた事」を「自ら試し学習してゆく」というプロジェクト学習の基礎として構築されてゆくわけです。何度も書いていますが、これこそが、教師がプロジェクト学習で「教える」のではなく子供の学びを「補佐する」という役に回るという事なのです。

なので日本の「正しい方法での」躾教育、そして 自立心を養う教育文化は、実は、プロジェクト学習の導入をするという事になれば、かなり助けになるわけです。

Quang Nguyen vinhによるPixabayからの画像

だからこそ、くろねこは、日本の教育文化にプロジェクト学習を導入することは、その躾文化の長所を十分に活かしながらも、さらに日本教育に欠ける「子どもの自主性」を発動させ、伸ばしてあげられる素晴らしいアイデアではないかと、確信しちゃったわけなのです。

そして、幼稚園教育要領2018年改訂版は、この「子どもの主体性」こそを全面的に打ち出してしているのです。

ここで出てきた完全無敵の幼稚園教育要領2018年改訂版

それでは、幼稚園教育要領はこの「子どもの主体性」を幼児教育の立場からどのようにとらえているのでしょうか。

「幼稚園教育要領解説2018年改訂版」には、「活動の主体は幼児であり、教師は活動が生まれやすく、展開しやすいい用に意図をもって環境を構成してゆく」(第1節 幼稚園教育の基本、2、環境を通して行う教育)と、カッコよく書いてあります。

でも、こうゆううお役所文書を見ると、やっぱりいっきにテンション下がって、誰かが必ずため息ついて「でも結局そんなのはただの理想論だよ~」と言いそうです。

「そんなのただの理想論でしょう!!!」
Robin HigginsによるPixabayからの画像

が、ちょっともう一度見てみて下さい。長くなりますが、前後の分も加えて引用します。これすごいです。

幼稚園教育が目指しているものは,幼児が一つ一つの活動を効率よく 進めるようになることではなく,幼児が自ら周囲に働き掛けてその幼児 なりに試行錯誤を繰り返し,自ら発達に必要なものを獲得しようとする ようになることである。このような幼児の姿は,いろいろな活動を教師 が計画したとおりに,全てを行わせることにより育てられるものではな い。幼児が自ら周囲の環境に働き掛けて様々な活動を生み出し,それが 幼児の意識や必要感,あるいは興味などによって連続性を保ちながら展 開されることを通して育てられていくものである.”

と説明した後、さらにこう議論を展開しています。

himanshu gunarathnaによるPixabayからの画像

つまり,教師主導の一方的な保育の展開ではなく,一人一人の幼児が 教師の援助の下で主体性を発揮して活動を展開していくことができるよ うな幼児の立場に立った保育の展開である。活動の主体は幼児であり, 教師は活動が生まれやすく,展開しやすいように意図をもって環境を構 成していく。

もとより,ここでいう環境とは物的な環境だけでなく,教 師や友達との関わりを含めた状況全てである。幼児は,このような状況 が確保されて初めて十分に自己を発揮し,健やかに発達していくことが できるのである。

これはまさに、この「プロジェクト学習やろうよ、ドキュメンテーション」のシリーズの中でずっと読者の皆さんとお話してきたことと、完全フィットです!(これまでの記事をチェックしてみたい方はこちらをクリック!!

完全無敵なんて嘘ウソ!保育士のドタバタの日々と幼稚園教育要領の悲しいバトル

しかし、これでもやっぱり

「こっちは子供の安全確保して、衛生面に気ィつかってるだけで一日終わっちゃうんだ。もう短大終わったし、教育要領なんてのは現場じゃあ何にも役に立たないし。」

なんて声があるかもしれません。確かにFacebookなどで日本の保育士さんたちの投稿を眺めていると、日本の保育現場での様々な悩み、そしてその解決案として交わされるコメントをよく見かけます。ですが、そこではこの幼稚園教育要領を引き合いにした解決案はほとんど見受けられません。全くもって教育要領が現場ではただの紙面上の機能していない決まり事になってしまっているのでしょう。

忘れられた紙面上の決まり事Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

が、ちょっと待ってください。

物は考えようです。もし、現場が幼稚園教育要領がまともに機能していないほど過酷な状態なのであれば、先生たちは今でこそ、そしてここでこそ、理想である「子供が主体の幼児教育」を実現できるチャンスのような気がします。

「??子供が主体の教育を!なんでプラカード持って練り歩くのかい?バカバカし!」…あっ、またこんな誰かの声が聞こえてきた(くろねこは想像力ありすぎて困ります大笑)!

違います違います、すっごい簡単な方法があるんですよ。それはですね、あなたの指導案と「幼稚園教育要領どの」の「言い分」をはっきり繋げてあげるんです。

「職場での調和が大切なんです、日本では!」先生たちの悔し涙

「指導案と幼稚園教育要領の言い分をはっきり繋げるってどういうことですか?」とあなたは聞くでしょう。どういうことかというと…

これを読んでくださっている日本の先生たちは少なからずとも、「もっと子供の主体性を大切にした実践をしたい」と願っていて、現在の過酷な日本の幼児教育現場の中でも、それを実現させるために日々模索されているのではないかと思います。けれど、日本の厳格でもあろう教育文化の一面を見せつけられて、「そんなことは到底無理だ」とあきらめムードになっている先生方も少なくないのだと思います。

なにかちょっと変ったことをすれば

「主任教諭に目をつけられたら絶対パワハラされる」とか

「みんながやってない事なのに自分のクラスだけでやったら、他の先生に変に思われる」

なんて心配になりますね。実はそういうことは保守的なヨーロッパ文化の流れをくむメルボルンにだってあるし、30年も前だけど、日本の超保守的な保育園で働いていた経験もあるのでその雰囲気はすごくよくわかります。きっと全てがアップデートされた現在だって、それは日本の保育士さんにとって深刻な悩みだと思います。

くろねこ先生の「だったらこうしちゃえ!」論。

しかし、それならば!

ならば、あなただけが、小さなところで「主体性を大切にした」教育を、他の先生たちにも園長先生にも主任教諭にも内緒で、始めてしまえばいいわけです。そしてくろねこさんはここで断言しちゃいます。それができるのが、「プロジェクト型学習」なのです!これは、ちっとも難しい事ではありません。

だって、今までお話させていただいたようにですね、プロジェクト学習は「子供の主体性」を最も大切にし、しかも日本の教育文化である躾教育が育ててきた「自立心」をその基礎としているわけです。

誰にも言わずに指導案にこれを土台にした計画を組み入れてしまったとしても、実際のところ問題はないわけです。

計画実行だ!Borko ManigodaによるPixabayからの画像

簡単にちょっと例をいうと、あなたが20人の幼稚園クラスを担当していて、クラスで、園の方針に従って、みんなを集めて朝の会をします。ピアノを伴奏にして歌っておはようございますの挨拶をする。それから季節のお話をしたり曜日や日にち、天気の話をしたりするのが通常ですが、この時、こういうお決まりごとはささっと終わらせて、「プロジェクトの話し合い」の時間の雰囲気にしちゃいます。

先生は、例えば「昨日お砂場で作った砂お城」の写真をあらかじめ用意して見せ、子供たちに「思ったこと」を自由に話してもらったとします。「お城をもっと立派にするには、あとは何がいる?」「本当のお城ってどんなだったっけ?」なんていう、子供の話し合いを掻き立てるような、または話し合いの軸になるかもしれないような質問は先生のほうから投げかけてあげます。子供が言ったことをちゃっちゃっとメモしてたら、「朝の会ごとき」プロジェクトの時間は、とりあえずおしまい。

子どもが「こういうの作りたい」って言ったりして笑 Hands off my tags! Michael GaidaによるPixabayからの画像

で次に子供たちが集まったときは「みんなお城について色々なことを教えてくれたけど、じゃあみんなでお城の絵がかいてある絵本を持ち寄って、本当はどんなお城があるか調べてみようか」なんてのを提案してみる。こんなことを通常の日課の中で話し合っていくうちに、面白いプロジェクト学習に発展してた、なんてことになるわけです。

これなら、プロジェクト学習をあなたのクラスで導入したとても問題ないわけですね。

そして、そのプロジェクト学習の導入を無敵な顔をして助けてくれるのが、何を隠そう、

先生たちが普段は敬遠する幼稚園教育要領なのです!

さあ!今度こそ幼稚園教育要領の出番です。レッドカーペットを敷いてすまし顔でいましょう。

あなたが、プロジェクト学習を他の先生たちにわからないように導入することに無事成功したら、その後で、徐々に裏付け論を展開してきます。

例えば、あなたは親御さんたちにあなたの教育の趣旨をきちんと説明したいと思うかもしれません。または、プロジェクトの展開が進めば、園長先生に話してサポートが欲しいと思うかもしれないし、または理事のほうから実践レポートの提出を求められるかもしれません。

Photo by Amy Hirschi on Unsplash

さあ、その時こそ、あなたの実践とこの幼稚園教育要領が打ち出す「子供の自主性を大切にした教育」を繋げ、あなたが実践していることを知ってもらうチャンスです!誰があなたの指導計画に異議を唱える事ができるでしょう?誰もいません。あなたは自分の理想の教育をしつつ、幼稚園教育要領を敬う日本幼児教育者の鏡になるわけですから笑。

でもあなたは「声を高らかに上げてそんなこと主張すんのなんて恥ずかしっ、嫌だっ!」って言うかもしれません。

恥ずかしっ、嫌だっ!Photo by Lachlan on Unsplash

なので、ここは幼稚園教育要領を十分に活用しつつ、あなた自身はすまし顔をしているのが一番です。どういうことかって?つまりあなたが作成している指導案そのものに幼稚園教育要領をリンクさせてしまうんです。

あなたは「これが私がやっていることです」なんて声を高らかに言う必要もありません。 指導案を書いたら、後はすまして自分で決めた実践をただ黙々をやっていればいいんです。この「黙々と」がすごく大事です。つまりあなたは自分の指導計画実践に夢中になって取り組んじゃうってことです。

途中年中行事なんかもあったり、ま、日本ですから、いろいろな決まり行事もあるでしょう。そんなことも、ちゃっチャツと要領よくこなして、それでもあなたと子供たちのプロジェクト学習は進んで行きます。プロジェクト学習のペースは少し落ちるかもしれませんが、それでもかまいません、必ず子供と一緒に決めた冒険を続けて行きましょう。

すると、あなたが夢中になって取り組んできた何か月か後には、あなたの実践が目に見える形で結果になる時が必ず来ます。この時こそが、あなたの指導計画が、プロジェクト学習を導入した画期的な指導案として、幼稚園教育要領実践を証明する素晴らしいお手本になってお披露目されるときなわけです!

そして、それを華々しく可視化レビューさせてくれるのが、何を隠そうこのシリーズのテーマである「ドキュメンテーション」なわけなのです(ドキュメンテーションが何かのおさらいはここからどうぞ

やった~!Photo by Ian Stauffer on Unsplash

「んなわけないやん!そんなうまくいかないよ」と、あなたは思いつつも、

「ふうん、んじゃちょっとやってみるか?」なんて思っってません?

そです、そうです、やってみましょうよ。

「でも~実際、まず何すりゃあイイの?」

それではその方法をお教えしちゃいましょう

それでは、あなたの指導案をどのようにして幼稚園教育要領を掲げる「子供の自主性を大切にした教育」として、あなた自身も快適に、そして確実にプロジェクト学習を現場に導入し、さらには効果的なドキュメンテーションを作成できるのか、それを次回の記事「七の巻 どうやってあなたの幼稚園で実践できるかって?日本の指導案とのマッチング笑」でご紹介したいと思います。

くろねこ先生、 「日本幼稚園教育要領の5つの指導のねらいと内容」をじっくりとお勉強して、他にはないユニークな内容でお届けさせていただきます。どうぞお楽しみに!

Photo by Toa Heftiba on Unsplash

参考資料

文部科学省 幼稚園教育要領解説2018年改訂版www.mext.go.jp/content/1384661_3_3.pdf

厚生労働省 保育所保育指針解説www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202211.pdf

文部科学省 学習指導要領「生きる力」∸幼稚園教育要領www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/index.htm

COULOURFUL, 幼稚園教諭の配置基準|ひとクラスの子どもの人数は?kimitotewo.com/about_sensei_48/

Yahoo知恵袋 Japan カテゴリー;幼児教育 幼稚園 保育園 detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1111523081

Study-Z、5分でわかる「ゆとり教育」どういう教育だった?何を重視した?論争やその後の影響を元大学教員が解説 study-z.net/100082844

Photo by Daniel Hehn on Unsplash

続きは次回の記事で!

虎の巻第6巻「 実は幼稚園教育要領さんは一番大切なパートナーだった! 」いかがでしたか?次の記事では、虎の巻第7巻 「どうやって日本の幼稚園で実践できる?指導計画に組み込まれたドキュメンテーション」(この記事を読む)をお送りします。ぜひまた遊びに来てくださいね。

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くろねこ先生の「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の学びの冒険シリーズ~ドキュメンテーション虎の巻全集~」次回もお楽しみに!

こんなお話もあるよ!

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