![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/clem-onojeghuo-ohR0ZoVRhkA-unsplash.jpg?resize=640%2C427&ssl=1)
Pedagogical Documentation Characteristics.
日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の学びの冒険~ドキュメンテーション編虎の巻第2巻「ドキュメンテーションってどんなもの?」の Part 2です!この ドキュメンテーション編 虎の巻では、9巻を10回の記事に分けて、プロジェクト型学習には欠かすことのできないドキュメンテーションの役割とその取り組みについて読者の方と一緒に考えています。まだ前回のを読んでない方はこちらから!
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/filios-sazeides-FS3rUiCjJjY-unsplash.jpg?resize=172%2C115&ssl=1)
他にはない深掘り思考の旅、気楽で呑気なのに真剣でかつ情熱的、とってもユニークなくろねこ先生のオリジナル、最後の巻までゆっくりとお楽しみくださいね!こんな感じでやってます!
- 一の巻 ドキュメンテーションっていったい何?なんでで英語よ?( この記事を読む)
- ニの巻 ドキュメンテーションってどんなもの?Part1 ( この記事を読む)
- ニの巻 ドキュメンテーションってどんなもの?Part2(今回はこの記事!)
- 三の巻 プロジェクト学習とドキュメンテーションの二人三脚の旅 (この記事を読む)
- 四の巻 くろねこ先生のドキュメンテーションちょっと見てみます?(この記事を読む)
- 五の巻 オーストラリアの怖~い監査とドキュメンテーションのお話(この記事を読む)
- 六の巻 実は日本幼稚園教育要領さんは一番大切なパートナーだった!(この記事を読む)
- 七の巻 どうやって日本の幼稚園で実践できる?指導計画に組み込まれたドキュメンテーション(この記事を読む)
- 八の巻 「こういうことする時間くれんならやってもいいよ」先生たちの時間戦争と勝算 (この記事を読む)
- 九の巻 「やらなきゃ実践」から「やりたい実践」への楽しい脱皮 「ああ、先生やってて良かった!」(この記事を読む)
日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習~子供が主体の学びの冒険シリーズ~では、幼稚園のプロジェクト型学習について、メルボルンの幼稚園を拠点としたくろねこ先生の実践例を紹介させていただいています。シリーズの初回記事のリンクはこちらからどうぞ.
それでは…今日のテーマに行きましょう!
2の巻「ドキュメンテーションってどんなもの?」Part2
引き続き、Pedagogical Documentation教育学的証拠文献と資料とはどんなものなのかその「正体」をつかむために、さらに資料を読み解いていきましょう。 使ってる資料は ギャリー サウスオーストラリアGowrie South Australiaの「ペダゴジカル ドキュメンテーション、サウスオーストラリア州の視点」(Pedagogical Documentation South Australia Perspective, 2017、 PDFのリンクはこちらをクリック )という、幼稚園教諭・保育士研修のためのプレゼン資料です。(この資料のバックグランドを知りたい方はこちらの記事からどうぞ、ここをクリック)
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/pereanu-sebastian-qFH7-yKoxik-unsplash.jpg?resize=186%2C140&ssl=1)
この資料「ペダゴジカル ドキュメンテーション、サウスオーストラリア州の視点」(以下「資料」と呼びます)の中では、「ペダゴジカルドキュメンテーションの特徴は何ぞや??What are characteristics of pedagogical documentation?」という問に答える形でキュメンテーションがどんなものであるかを、下記の9つのセクションに分けて説明してあります。Part2では、後半の5項目について読み解いてゆきましょう。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/kwang-javier-qcRMfoIWxRo-unsplash-6.jpg?resize=131%2C104&ssl=1)
Part1(前回の記事のトピック→詳細はこちらをクリック!)
- ドキュメンテーションは対人関係から展開する学びを明確にしてくれる!
- ドキュメンテーションは「私の考え」で良い!
- ドキュメンテーションとは教師が学ぶこと
- ドキュメンテーションで私たちが何者かを知る!
Part2(この記事のトピック)
- ドキュメンテーションは子どもは尊い研究者であることを教えてくれる!
- ドキュメンテーションとは子供の声を聞くということ
- ドキュメンテーションには理論が必要 ~ヴィゴツキーの最近接発達領域説の出番だよ~
- 子どもの声に沿った学びの旅の記録、それがドキュメンテーション
- ドキュメンテーションはシェアするもの
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/ergita-sela-Mi8CpaO5o-A-unsplash.jpg?resize=142%2C94&ssl=1)
では一つ一つ原文を交えてくろねこ先生流にお話ししてみますね。
1.ドキュメンテーションは子どもは尊い研究者であることを教えてくれる!
Documentation values children as learnersドキュメンテーションは子どもを学習者として尊重する
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/Screenshot-2021-11-12-124453.png?resize=170%2C160&ssl=1)
これ、簡単に理解できそうで、実はちょっと奥深い意味がありそうです。
資料のこのセクションには、レッジオチルドレン代表のカルラ.リナルディーCarla Rinaldi の想いが記されています(「レッジオエメリア対話しながら;知の紡ぎ手たちの町と学校」(里見実訳2019年、出版 原書はIn dialogue with Reggio Emilia: listening, researching and learning(2006)からの引用として記されています。)
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/Screenshot-2021-11-11-152618.png?resize=164%2C232&ssl=1)
セクションの原文は以下のようになっていますが、ここは訳文は避けて、原文の後にくろねこ先生なりの言葉にしてにみなさんにお話してみようと思います。
The value of documentation for children is that they can see what they have done and come to understand its meaning for them. At the same time, children can hear about the meaning of their work for their educator, the educator’s interest in it and valuing of it. In this way children come to see the importance of their work, and the value that others place upon it, that it is meaningful. When children see that their work is meaningful and highly regarded they begin to see themselves as persons who contribute value and meaning to their world. They can see that what they do is important, and as a result they feel appreciated. (Rinaldi 2006, p. 72)
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/mert-erbil-xERumQci3t8-unsplash.jpg?resize=281%2C212&ssl=1)
Photo by Mert Erbil on Unsplash
上記について、くろねこ先生流にお話してみますね。
前回までの記事で私たちが見てきたように、私たち教師は、子供との学習過程を一緒にドキュメンテーションに残すことで、子供たちが自分たちの学びの旅を振り返り、自分たちが何を見てどんなことに不思議を感じそして何を学んだのかを、教師と一緒に認識することができるのだと確認できましたね。それがドキュメンテーションをやることの大きな意義でした。
リナルディはさらにここで、子供がドキュメンテーションで自分たちの学習を振り返るとき、彼らは「先生がどうしてそのことに興味を持って、自分たちと一緒にそれを学ぼうと思ったのか」という事も同様に知るのだと、説明しています。つまり、ドキュメンテーションを通して、子供たちは「教師の教育的意図」を感じ取ることができる、という事です。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/filios-sazeides-FS3rUiCjJjY-unsplash-1.jpg?resize=174%2C116&ssl=1)
さらに、子供が先生の教育的意図を感じ取ったうえで、その「学習の旅」を楽しむことで、子供たちは自分たちのしている「学び」に意義があることをもっと強く感じ、自分たちは「素晴らしい学習をしているんだ」と自覚し自信を持つことができる、というわけです。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/kwang-javier-qcRMfoIWxRo-unsplash-4.jpg?resize=188%2C151&ssl=1)
このセクションはThey can see that what they do is important, and as a result they feel appreciatedという文で終わっています。 appreciatedという言葉はすんなりと日本語にならない単語ですが、つまりその結果、子供たちは自分達は認められているんだと自覚しできるという事です。
このセクションを読んで前回の記事で紹介させていただいた、くろねこ先生の「キッチンツールプロジェクト」のドキュメンテーションが頭に浮かびました。この キッチンツールプロジェクトは、1学期でもあったので「幼稚園の活動に自信をもって取り組めるようになる」という意図があって、私自身から子供達にアプローチをして始まったプロジェクトでした。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/IMG_20211105_160254_LI.jpg?resize=332%2C443&ssl=1)
「身近な生活の中から始まる愉快な学びの冒険」という事で、私が自分のクラスで導入しているプロジェクト型学習のイントロダクションという意味もありました。この教材を持ち込んだ時、正直、クラスの子ども達は半信半疑でした。
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「字を学ぶ」「数を学ぶ」の概念教育は、親だけではなく、子供にも定着していた幼稚園の印象です。そこに持ち込まれた、まさかのキッチンツール!「これはポテトマッシャーです。」と教えれいいものを「本当にポテトマッシャーなのか、マッシュポテトを作って実証して見よう」と言われたわけですから子供たちはちょっとびっくり。しかし、そんな風に一つ一つのキッチンツールについて実証したり実験しながら、学期末には子供たちはずいぶん自信をつけ、自分たちこそが「学びの冒険の中心」であることの自覚を見せてくれるようになりました。
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良く思い起こすと、あなたのクラスでもきっと同じような展開があるのではないでしょうか?子供が素晴らしい学習者になることが出来るその舞台の裏に、私たち教師の意図的なアプローチの大きな意義が浮かび上がります。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/clem-onojeghuo-ohR0ZoVRhkA-unsplash.jpg?resize=171%2C114&ssl=1)
2.ドキュメンテーションとは子供の声を聞くということ
Documentation is a kind of listening ドキュメンテーションとは聞くこと
これは簡単なことのようで、実は結構難しいと感じる先生も多いんじゃないでしょうか。「こういうことを子供たちに教えたい、知ってもらいたい」と思う時、私たちはついしゃべり過ぎてしまって、子供たちの話にゆっくり耳を傾けることをつい忘れてしまいがちです。
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資料の中で、アン ペロAnn Peloは, 2014年にEarly Childhood Australia が主催した 指導から思考へ:探究の組み立てFrom teaching to thinking: a framework for inquiryという講演会の中で、教師は子どもと一緒にそこに「出席」している必要があって、「教えない」と決めれば子供の声を活発に聞けるようになる、と講じたとあります。
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先生なら誰もが、これにはものすごい忍耐がいることを知っています笑。けれど、プロジェクト型学習を含め、すべての構成主義型の指導法(子どもの主体的な学びを中心に据えた指導法)ではこの「聞くという忍耐」が教師にとって一番必要な事のような気がします。
またリナルディは、子供が他の人に自分の考えを話すときにこそ、子供自身の中で自分の考えやイメージのビジョンをはっきりさせることが出来る、これが「インターナル リスニング」である。そして教師が子どもの考えをよく聞いてそれをまた彼らに返してあげると、その会話は結果的にとても充実した豊かなものになる、とThe Pedagogy of listening聞く事からの教育学(2000)というInternal Reggio Exchangeインターナショナル レッジオエクスチェンジのInnovations for Early Educationという紙面記事の中で言っています。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/Screenshot-2021-11-11-160045.jpg?resize=180%2C230&ssl=1)
これは私達が普段の実践の中で良く感じていることだと思います。
例えば、これはケント君とおとぼけ先生の会話です。青色がケント君の言葉です。
「家の時計には針が付いてないよ。でも幼稚園の時計には針があるね。」
「うん、あるね」
「あれえ、長いのと小さいのがあるよ。きっとあの数字が時間だよ。これが1時でこれが2時でしょう?」
「ああ、そうか、これが1時でこっちが2時か。数字が時間なんだ?じゃ今何時?」
「えっと、3時!」
「あ、ホントだ、先生のデジタル時計も3時だ、なんでわかるの?」
「だってえ…この針が3のところにあるでしょう?」
「うん、針が3のところにあるね。でもこっちの針は違うよ」
「(先生のデジタル時計が3時である事実を意識して)でもこっちは3のところにあるから3時かも」
「うん、こっちは3のところにあるねえ」
「…だから3時! …」
「ああ、そうか、だから3時か」
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/ales-krivec-ZMZHcvIVgbg-unsplash.jpg?resize=204%2C152&ssl=1)
「だから…こっちの針が3のところに来ると3時だから、2のところに来ると2時だ!」
「ああ、そうか!」
「1,2,3,4,5,6,7,8,9 …10…11…12!」
「うん、12まであるね。」
「12時まであるんだね、じゃあ!お昼ご飯の時間じゃん!」
「そうか、じゃ、ケント君、明日、12時になったらみんなに教えてね。」
「 オッケ~!こっちの針が12になったときが12時だよ。教えてあげるね~」
おとぼけ先生が、受け身になってケント君の「思考」を自然に助けているのがわかりますね。もしもおとぼけ先生がとぼけないで始めから 「短い針が3を指してるから今3時。時計はこうやってみるんだよ、わかった?」と「教え」ていたら、ケント君は「時計の仕組み」を知ることに興味を持たなかったかもしれません。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/kwang-javier-qcRMfoIWxRo-unsplash-6.jpg?resize=125%2C100&ssl=1)
ケント君は自分が知っていること、そして不明確だったことを、先生に聞いてもらうことで、自分自身でが答えを推測して、それををクリアすることができたわけです。そしてケント君は自分が新しい発見をできたことを知って楽しくなり、「針時計」の会話はお家や他のお友達とシエアされることになるのかもしれません。学習はますます広がってゆきますね。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/saeed-karimi-JrrWC7Qcmhs-unsplash.jpg?resize=212%2C170&ssl=1)
会話例は「時計」についてでしたが、この「教師のおとぼけ大作戦」は、普段の友達関係や環境問題などに関するデリケートなトピックであっても全く同じ様に子供たちの会話をサポートしてあげることができ、それは子供たちの真の学びとなってゆくわけですね。
ペダゴジカルドキュメンテーションは、こうした子供の「思考の旅」を書いたり録音したりして残すことで、子供たちの「考えるプロセス」を視覚的に見直す(または聞き直す)ことが出来ます。なので、リナルディはドキュメンテーションのことをBuilding of knowledge 知識の構築とも位置づけているそうです(In dialogue with Reggio Emilia: listening, researching and learning、2006、P68)
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/artem-beliaikin-QY2MQm0nRI-unsplash.jpg?resize=242%2C161&ssl=1)
そして、そのドキュメンテーションは、子供たちの学習の過程と次の展開を考えるための大切な資料として、その教師だけではなく他の教師、保育士、親、子供自身、そしてその学びを取り巻くコミュニティ全体によってレビューされてゆくわけです。
3.ドキュメンテーションには哲学理論が必要~ヴィゴツキーの最近接発達領域説の出番だよ!~
Documentation needs theoryドキュメンテーションには理論が必要である
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前回の記事で(まだ読んでない方はこちらをクリック!)ドキュメンテーションは主観的であるべきと書きましたが、主観的にドキュメンテーションを展開させるには、それを裏付ける「理論」が必要です。前回の記事で「私はトムがお友達におもちゃを返してほしいと自分で言えるようになってほしい。」という教師の主観的な考えを示したドキュメンテーションの文を例に挙げましたが、ここにも裏付けされる「理論」がきちんとあります。上のセクションの「おとぼけ先生とケント君の会話」で展開される学習もこれと同じ理論で説明できますよ~。それはヴィゴツキーVygotskyの 最近接発達領域説The zone of proximal development( 1978)です。
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ちょっと難しい話になっちゃいますが、資料はこの最近接発達領域説とドキュメンテーションの意義を深くつなげて説明しています。発達接最近領域説、覚えてます?くろねこ先生は30年前、大学のテストでこれに打ちのめされた事を、これを力説していた教授の顔と一緒に思い出します苦笑。
最近接発達領域説とは、子供は「サポートがあれば何とかできること」の範囲では、サポートを受けると、期待した以上の学習効果を発揮できる、という理論です。この範囲で学習が展開されるところこそ、ドキュメンテーションとされるべきのところなわけです。つまり、先生と子供が「子供にとって答えがわかりそうでわからない微妙な疑問の答え」を探るためにともに学びを展開し、それをドキュメンテーションにしてゆくという事です。
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しかし資料はここで、これら最近接発達領域説を中心とした発達理論は、子供の行動を理解し、子供たちが社会的環境を理解することに役立つが、さらに、ここに批判理論のような現代理論も取り入れることで、「当然こうである」という信念から自由になり、どの様に子供のアイデンティティの発達に積極的に関わることができるのか思考を巡らせることができる、とも説明しています。
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資料の中で発達理論のみでドキュメンテーションを作成することへのリスクを意義深い例で説明されているので、そのまま引用してみますね。
To illustrate, a young pre-schooler observes that a new classmate has an accent that is not the same as hers, points and laughs at that child and says, ‘You talk funny’. The employment of child development theories will lead the educator to the idea that noticing differences is a part of age appropriate development, but it does not address the fact that this interchange has implications to the identities of both children, the child who made the observation and the one who received the message. 例えば、ある子供が、違う土地から来て違うアクセントで話す新しいクラスメイトを指さして「あんたのしゃべり方、変なの!」と言って指をさして笑った(としよう)。ここで児童発達学を採用することは、教師を、幼児が「他者との違い」を認識するのは年齢的に(健全な)発達の一部として捉えるという(伝統的な)発達理論に導くであろう。しかし、(この結論付けは)それを言った子供とそれを言われた子供の両方の子供たちのアイデンティティに影響を及ぼす、という事実には対処していないのである。(なのでここは現代理論も取り入れて考察するべきだ)
私たちがドキュメンテーションに携わるときは、従来の発達理論に基づく裏づけを展開させながらも、常に子供の感情の世界を理解しようとする柔軟な思考で、真実を探ることのできる哲学理論を取り入れてゆきたいものですね。
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付け足しになりますが、使う理論をドキュメンテーションに示さなければならない、という事はありません。場面によっては、理論を文章で示して、それを見る親や他の先生たちと共有することも必要になることもあるかもしれません(子供の学習への協力や参加、または理解を求めるときなどは裏付け理論を示すことは効果的です)。が、 あくまでも大切なことは、教師はドキュメンテーションを展開するときには、教育の実践者としてその裏付けになる理論を意識し、認識する必要がある、という事です。
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4.子どもの声に沿った学びの旅の記録、それがドキュメンテーション
Documentation values children’s voices ドキュメンテーションは 子どもの声を大切にする
これは、これまでの記事の中でお話ししてきた通りですです。まだ読んでない方はぜひドキュメンテーション虎第1巻(リンクはこちらをクリック!)、そして第2巻Part1(リンクはこちらをクリック!)を読んでみてくださいね。ドキュメンテーションというのは子どもの声に沿った、本当に生き生きとした学びの旅の記録であることをヒシヒシと感じていただけると思います。
子どもの声とドキュメンテーションについて、資料にはフォーマンとフレイヤForman and Fyfeの言葉が紹介されていたのが印象に残ったので引用します。( Negotiating learning through design, documentation and discourse’, 2012、p. 255 )
Documentation presents ‘unique stories that reveal forms of thinking no book of standards contains’ドキュメンテーションとは(大人が考えるようないわゆる)普通(といわれる)本にはない考え方を発見させてくれる(大変)ユニークな物語である。
ドキュメンテーションの過程では、子供の会話、対話、表現や行動に沿って、大人の発想にはない、たくさんの愉快でユニークな物語が展開されます。それらのすべてが学習の始まりとなり、学習の展開になって行きます。子供は「想像する」ことから「不思議や疑問」を感じ、その不思議に対しての真実の発見を予想し、それを実証するために実験したり調査したりするという、生きた学びの旅に引き込まれてゆくわけです。
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そしてそこから新しい発見があった時、それを誰かの前で表現し、自分達の学ぶ力を確認するのです。なので、ドキュメンテーションにはマニュアルはありません。すべてのドキュメンテーションは、その時の学習者である子供たちだけの中で展開される、世界に一つしかないとても特別な物語となるのです。
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5.ドキュメンテーションはシェアするもの
Documentation is exhibited ドキュメンテーションは展示されるものである
ここは、資料からの原文を紹介せずに、くろねこ先生の訳をそのままご紹介。
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幼児施設の設定(幼稚園保育園)には、ドキュメンテーション、つまり子供たちが学習したことを展示するがスペースがたくさんある。それは、壁であったり、テーブル、床、天井、そして出版物であったりするだろう。これらは、単に子供たちの成果を展示することを目的としているのではなく、子供たちと教師が何を学んでいるのかについての議論を引き起こし、学びを見直してみたり、次の学習展開の方向性を示したりするための展示なのである。
このような展示には、多くの場合、子供たちの作品の横に教師の感想が添付されていたり、写真や子供たちの物語があって、そこから広がってゆくかもしれない次の学習展開についての考えが語られている。 そこには子供の理論も示され、発見過程としての学習の重要性が示されている。
このように、学習が展示され、可視化されると、他の子供や教育者、保護者、コミュニティ、さらには政策立案者でさえ、子供達の学習展開を見ることができる。 子供たちはまた、自分達の学びが評価され、彼らの学習には大きな意味があることを理解するのである。
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ドキュメンテーションを展示することによって、その子供の教育または発達に関わる人々が「子供達の学習展開を見ることができる」とあります。このことによって、子供の学習は、子供を取り囲む環境が与えてくれるたくさんの経験を取り入れて、または様々な見方や考え方を取り入れて、さらに豊かな展開を期待できるようになるわけですね。
これは例えば、発達障害を持つ子供の療育専門家とその子の学習展開をシェアでき、それによって専門的な意見を次の学習計画に役立てたり、またはコミュニティと学びの旅をシェアすることで子供に生きた地域体験をさせてあげることができるかもしれません。また親にドキュメンテーションを常にオープンにアクセスできるようにすると、親たちは自然に子供の学びの旅への参加を楽しむようになり、これによって子どもの「学んでること」への取り組みがさらに熱心になります。親の意見や参加もちろんドキュメンテーションに含まれてゆきます。
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また、他のクラスの先生や園長先生が、ドキュメンテーションによってそのクラスの学びの旅を知っていて、「こういうことやってんの知ってるよ!先生にも教えてよ!」と声をかけたり、または何かを調査するのにインタービューの対象になったりと、子どもの学びの活動をより一層盛り上げてくれますね。
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学習者自身、つまり子どもたち自身にとってもドキュメンテーションは大変深い意味があります。ドキュメンテーションが展示され、アクセスがオープンになっていると、子どもたちは学習展開の過程で何度も自発的に自分たちのドキュメンテーションを見直すようになります。そして今、自分たちが旅の途中のどこにいるのかを話してみたり、その旅で深めたお友達関係を確認しあったり、それぞれが達成したことを自慢しあったりと、彼らの学びへの取り組や熱意をより一層クリアに感じることができるようになります。
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ドキュメンテーションを見直すことで違う疑問に遭遇し、それがきっかけで新しい学習展開を迎えたりすることもあります。子どもはドキュメントされる側だけなのではなく、ドキュメンテーションの過程に参加することで、より豊かな学びの旅を経験することができるのです。
![](https://i0.wp.com/earthchildren.blog/wp-content/uploads/2021/11/avel-chuklanov-DUmFLtMeAbQ-unsplash.jpg?resize=161%2C108&ssl=1)
また、他の記事でも書いたようにドキュメンテーションは上司や監査など「お偉方さん」へのあなたの仕事の最強のエビデンス(証拠)にもなります。これはあなたが「ちゃんと仕事をしている」の証拠ではなく、あなたが「真剣に子どもと教育に向き合っている」という証拠です。なので「見せるためにやってるなんて…」なんて怯む必要はありません。ドンドン素晴らしいドキュメンテーションをしてゆきましょう。
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そして、ドキュメンテーションをシェアすることの一番の意義として私たちが価値を置くのはクラスで一緒にその子供たちを教えている全ての先生です。これはもちろんアシスタント先生も含まれます。
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ドキュメンテーションの可視化によって、スタッフみんなが学習展開を把握することができ、次にどのように学習の旅を進めたらいいのか、アイデアを出し合って議論することができます。日本には「3人寄れば文殊の知恵」という諺がありますが、この信念はまさにレッジオの「先生は研究者であるTeacher as researcher」の理念を浮かび上がらせてくれます。
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Photo by Randy Fath on Unsplash
自分の先生全員が、今取り組んでいる「学びの旅」に向き合って真剣に意見を交わし、それをサポートしていることを子供たちが感じる事が出来たら、 もうきっと、それだけでも、子供たちが幼稚園生活で得てるものは計り知れないものとなるでしょう。ドキュメンテーションとは、子どもたちと教育に携わる私たちを、そんな風に強いセンスオブコミュニティSense of communityを持って繋がらせてくれる最強のツールなのです。
続きは次回の記事で!
「ドキュメンテーションってどんなもの?」Part2はこれでおしまい。次の記事は、虎の巻第3巻「プロジェクト学習とドキュメンテーションの二人三脚の旅」です(この記事にジャンプ!)_。
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くろねこ先生の「日本の幼稚園でできるの?やろうよプロジェクト型学習、子供が主体の学びの冒険シリーズ~ドキュメンテーション虎の巻全集~」次回もお楽しみに!
Reference
Jamie Huff Sisson and Victoria Whitington, Gowrie South Australia, ‘Pedagogical Documentation:A South Australia Perspective’ https://gowriesa.org.au/docs/Pedagogical-Documentation-08-02-2018.pdf