玲子ピアノ教室 「好きなものに囲まれてピアノを弾く。」- reikoyutani instagramの写真より

こんにちは、メルボルンのくろねこです。今回の心ほっこり話は、ピアノ教室を主催されているreikoさんという方の、生徒さんとの心温まるほっこり話をご紹介させていただきます。

みなさん「ピアノの先生」って聞くとどんなイメージがあるでしょう?私は日本での大学の4年間、小学校・幼稚園教諭の資格を取るために猛ダッシュでピアノを練習した「にわかピアニスト笑」なので、ハッキリ言って「ピアノの先生のイラつく怖い顔」しか思い浮かびません苦笑。(記事の最後にくろねこ先生のピアノ奮闘記のお話もあるので、そちらもぜひ見ていってね)

音楽って、自由に自分の心情を表現できるから楽しんですよね。それは子供も同じ。でも音楽で自由に表現できるようになるためには練習をしなければならず、先生の教え方やその練習の仕方を間違えると、すぐさま「楽しいこと」も「嫌なこと」にかわってしまいますね。「ピアノ習ってたのに、先生厳しいし練習が嫌だからやめた!」なんていう子供の話をたくさん聞きます。

でも、幼稚園で子供を教える教師として、保育士として、やっぱり子供には音楽が好きになってほしいなあって、皆さん思いますよね。

今回ご紹介させていただくreikoさんは、子供に音楽の楽しさを心から教えてくれる、そんな素敵なピアノ教室を運営されていらっしゃいます。今回、そのreikoさんの素敵な文章をこのEarth Children Blog 心ほっこりのんびり話で紹介させていただけることになりました。

reikoさんの、力強い中にでも優しいささやきが聞こえてきそうな、心あたたまる文章に、皆さんもぜひ心を癒されてくださいね。私たちの子どもとの音楽体験にちょっぴりエッセンスが加わりそうです。

文章に出てくるお名前は仮名です。

 

~reiko先生とけんじ君の心ほっこりのんびり話~

 

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より

ピアノの生徒さんに小学5年生のけんじ君という男の子がいます。
ちょっとデリケートでね、
人といるのがあまり好きではないみたい。
お家もあまり居心地が良くないみたいで
寺小屋みたいに我が家にしょっちゅう入り浸ってる。

私の本棚をのぞいて漫画を見つけ「先生~このブラックジャック読んでいい?」って。

一人っ子でね、とても大切に育てられてる。
専業主婦のお母さんとお医者様のお父さん。

一度けんじ君に言った事があります、
「先生ん家ぐっちゃぐちゃじゃない?太郎君のお家の方が先生なら休まるんだけど!」
って。

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より

そしたら、ポツポツとしか話さないけんじ君はぽつりと一言

「reiko先生はほったらかしといてくれるから…」
「細かいこと言わないし…」


教育方針なんていう大袈裟な物は何も持っていないけれど、
あえて言うなら,

子供たちには
ど~んとぶつかって
もし大失敗やらかしたとしても
自分の中で「てへぺろ」まで持って行ける、その一連がワンセットみたいな世界観を持ってほしいなと思っていて、
その気持ちがこの子にはなにか響いている気がしたのでした。

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より


誰かが何かにチャレンジするとき

「失敗なんてないよ」

なんてアドバイスする人がいる

でもこんな言葉はもう、みんな聞き飽きてるでしょ?
この言葉を聞いたって、だれも感じる怖さはぬぐえない。
相変わらず等身大でそこに失敗という怖さのエネルギーはある感じがする。

言葉を雑に扱っちゃいけない、言葉は簡単に駆使できる魔法だから

「思い切りば~んとやってみな!

それでもし駄目だったとしても “思い切り出来た自分!”に誇らしさを感じてみると、チカラがぐんと増すばかりなんです。これは魔法です。」

と私は自分の生徒たちに言う。

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より


…肉体の皮を脱ぐ時(人生を終える時)
あぁ~やりたい事やったわ…
まわりの人も大事に出来た…

と本当に思える程に丁寧に生きられたのならもう優勝だと思っているわたし。

そんな私だから教室では 
ご両親様の思惑想定外かもしれないけれど、

「地球は思いっ切り自分の感じ方を表現し、やりたい事をやってみる場所なんだから
他人の目や評価なんていう外野は放っておいて
自分を表現してる自分ってスゲーカッコいい!って自分が自分にそう思える視点が現れるまでとことんやってみな!」

と子供たちに伝えています。

「4歳の生徒ちゃんの作品」玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より

でも余計な鎖は
それを鎖だと気づいた者が設定の解き方を教えてあげたらいいのよね。

失敗に対する耐性、
こういうのは習慣だからね

「ど~ん」とやってみて思うようにいかなかったとしても
「ドンマイ、おし!次!」
って

失敗しても

さっさと切り替わるマインドになったら
もうどのフィールドに行こうが

「この子は大丈夫。自分の力で切り開いてゆくだろう。」

と私は思うのだ。

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より

で、…そのけんじ君の発表会の日がやってきた。


背伸びに背伸びを重ねた無謀過ぎる選曲(ショパン:幻想即興的)をした彼は
いつもの2倍速の速さで駆け抜け思い切り彼のやってみたかった表現を出し切ってのけた。

舞台袖でお母様が
「あんなに滅茶苦茶に弾いて!恥ずかしくて逃げて帰りたい」とおっしゃっていました。

私は、というと…

感動で震えてね、息も出来ない位圧倒された。
彼の生(活)きているエネルギーに。

そうこなくっちゃ!
君の生身のエネルギーを見せて貰えて、先生はホントに感動して涙が止まらないよ…

ステージから帰って来た彼に
「お前カッコいいな~~~‼️‼️」ってぐしゃぐしゃにしたら

「先生、俺やべー(笑)」

だって!!!

今思い出しても震える、けんじ君との発表会の思い出。

 

思い起こすと…

内向的でお友達とも馴染めず困っていると、お母様に連れられてけんじ君が私の教室に来たのは4年ほど前でした。

4年です、4年前はピアノのドレミも知らなかった子がショパンの幻想即興的を弾くというのはそうだな…小学4年生で大学に行きたい、という感じです。

けれどね、私はいいと思った。

ピアノ教室の生徒さんとカップケーキを作るのもreikoさんの楽しみなのだそうだ。玲子ピアノ教室 – reikoyutani instagramの写真より


何故なら初めてお母様に連れられてきたその時から、無口なけんじ君の心の中に「ピアノを弾きたい」っていう熱~い塊があるのを感じたから。

この熱をうまい具合に人生に活用していければいいな、とそのきっかけを待っていた私にとっては、けんじ君の発表会での挑戦は
わたしを「ニヤリ」とさせた(笑)。

面白いもので
どんなに小さくても女の子は
お洒落やまわりの子たちとの日常に気持ちが向かうけれど、
男の子は一度「やる。」と決めたら
とことんやるからね。
男の子と女の子では本当に小さな時からエネルギーが全然違います。

 

ピアノ教室の生徒さんとカップケーキ作りー「もはや何屋かわからない笑」玲子ピアノ教室 – reikoyutani instagramの写真より


けんじ君は、藤井 風というアーティストのYouTubeを見て魅せられ、
「発表会ではこの曲を弾く」と彼が自分で楽譜を買って持ってきたんです。

自分でやる。と決めてからのけんじ君は凄かった
同級生にイジメられようが
学校が嫌だろうが
向かう対象が出来ると人は強い。
黙々と来る日も来る日も
ピアノのレッスンに通い続けました。

ある日、レッスンとは別にお母様が訪ねていらっしゃって

「あの子の将来が心配だ、
中学に行ってうまくやっていけるのか心配だ」とおっしゃられた。

わたしは

「彼は絶対に大丈夫ですから」
とお伝えしました。
だって彼は今まさに、
自分の世界を作り始めている。

そして、意識せずとも
外野から自分の敏感な心を守ってやれるエネルギーフィールドを構築中なのだから。

「自分で決めて、進んでいけるチカラを今まさに身につけている最中だから、
お母様はう~んと ‘いいね️’という心からの応援のパワーを送ってあげてくださいね、それが何よりもチカラになるから」

そう、わたしはけんじ君のお母様に言いました。

ピアノ教室の生徒さんとカップケーキ作り。玲子ピアノ教室 – reikoyutani instagramの写真より

けんじ君は、
年老いた老猫を大事にいたわれる気持ちや
大先生(90歳の老先生)の歩く速度に合わせてさりげなくゆっくり歩調をあわせる事の出来る、
とてもやわらかな成熟した感性を持っている人間でもあった。
人の気持ち、自分の気持ちを大事に出来る土壌で生きている彼なら、絶対に大丈夫だという確信が、私にはある。

「自己肯定感」
心理学で使われるそんな用語なんて知らなくても
親は子供に
「花子ちゃん、凄くいいよ、それって!」と嘘のないエネルギーで
それを伝えてあげる事が一番の自信の源になると思います。

たとえ発表会でミスしたとしても
ミスした事ではなく
「思い切り表現出来た事」や
「堂々としていて格好良かった所」など
褒め称えられる場所が沢山あるんです

そこをつぶさに見つけて心を込めて伝えてあげられる、
そんな意識の使い方も、とても大事な能力の一つだとだと私は思っています

ご両親にはご両親だからこそあげられるエネルギーがある。

ご両親と彼の距離感と
ピアノの先生としての私と彼との距離感は勿論違っていて、

私の距離だからこそ彼にあげられるモノ、
私の距離だからこそご両親にお渡し出来るモノがあるのです。

 

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より


エネルギーの使い方を吟味する事、そして人に「あなたの素敵さ」を伝えられるチャンスを決して見逃さない事を大事にしたいな…
とそんな風に常日頃から思って生きています。

人がしてくれた事に気付き、
人の気持ちを大切にするという心の使い方を身につける事は、大切な心のお稽古だと私は思うのです。

そんな心の習慣があれば、
あとは何とでもなるのだと
本当にそう思います。
運も縁も人が運んでくれるものだからね



子供は全然幼稚な精神しか持たない訳ではないです。とんでもない!
私が彼らに教えてあげられる事の数百倍、私は彼らから豊かさを教えて貰っています。

そして私が子供達に見せてあげられる一番のものは
「失敗したとしてもその水滴をブンっとふるい落として心から楽しむ姿」

なのかなと思っています。

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より


人の目が気になって思い切り自分を表現出来ない子供も愛おしい、
まわりが見えず自分ばかりの視野で生き辛くなっている子供も愛おしいです。

「ね、先生はデコボコとした自分の個性を受け入れて生きてんのよ。だから、キミたちも自分で選んで自分で決めた人生をスカっと生きるのよ!」

そんな気持ちを子供に託して、

私は今日も子供と一緒にピアノの鍵盤に向かいます。

玲子ピアノ教室- reikoyutani instagramの写真より

reikoさん、素敵なお話をシエアしてくださってありがとうございました。reikoさんのバックグランドとインスタグラムを通した連絡先ははこちらです 

reiko 

Instagram ; 玲子(@reikoyutani)    ヒーラー、心理カウンセラー、レイキという日本発祥のヒーリングメソッドの伝授という仕事を経て、現在はピアノを楽しみたいひとに向けたピアノ教室とヒーリングピアノ活動をしている。カウンセリングややレイキ講座、演奏活動が忙しくなりすぎてしまったので
パンデミックを機に純粋に自分の大好きな事を自分のペースでやっていけるようにと山奥に引っ込む。京都の奥座敷、山奥にひっそりとたたずむ、3歳から80歳までの年齢も国籍も様々な音楽をこよなく楽しみたい仲間達が集うピアノ教室「玲子ピアノ教室」を開催。ピアノ教室の他には「まどろみピアノ」というヒーリングピアノ活動をしている。

 

くろねこ先生のピアノ奮闘記の続き

 

Photo by Brett Jordan on Unsplash

日本での大学の4年間、小学校・幼稚園教諭の資格を取るために猛ダッシュでピアノを練習した「にわかピアニスト笑」の私。

大学で私みたいな「にわかピアニスト」のでんでんむし級の進歩をチェックしていたのは、ほとんどが若い講師の先生だったと思いますが、半期ごとの恐ろしい技術試験を担っていたのは、うちの大学の「名誉教授」おばあさん(自分ももうすぐあの年だ!)。

50歳を過ぎてやっと見なくなったけど、数年前まではいつも夢に出てきた、冷や汗をかいて鍵盤を叩いている私の可哀そうな姿とそれを見ている怖いあのおばあさんの顔!、ひょうえ~。

まだあります。オーストラリアに来る前お勤めていた保育園には専属のピアノの先生がいて、子供のピアノのレッスンだけじゃなくて、ご丁寧にも保育士たちのピアノのレッスンもやっていました。そこに勤めていた保育士は週に一度昼休みを全部使ってレッスンに参加しなければならず、その月謝は毎月の給料から引かれちゃうのです。

今思うとひどい話ですねえ。オーストラリアでこんなことがあったらみんな間違えなくその保育園をやめちゃうし、経営者は即営業停止になっちゃいます苦笑。

Photo by Thomas Le on Unsplash

で、その保育園専属のピアノの先生が、これまたものすごい意地悪でした。私はたぶんその園で「一番ピアノが下手」の落ちこぼれ保育士でしたから、先生も言いたい放題でした。

「どっかの教室からとんでもなくひどい伴奏が聞こえてきたけど、あれ、あなたでしょう?ひどすぎだよ、あれは。」なんてのが毎週のピアノの先生のご挨拶でした。

挙句の果てに、職員会議中には「ピアノの発表会」も行われました。「2度間違えたら次の会議の時にもう一度弾く」ってのがルールだったと思います泣。ピアノの先生と園長が一緒に「上座」に鎮座してニヤニヤして見ていたを思いだします。

これほどいやな思いをしたピアノなので、オーストラリアで幼稚園教諭として働き始めたときは天国に舞い上がる気分でした。だって、ピアノ、もう弾かなくていいんですから!(正直、ピアノが必修なのは世界中見てみてもおそらく日本の保育士・教諭だけです。教育熱心な中国でさえ、これは必修ではないと思います。20年間様々な国から来た先生たちと働いてきて得た情報。)

ところが面白いことに、ピアノは弾かなくてもいい、となると「じゃあ、弾いてみようかな」と思ったりするのが人間です。強制されない、下手でも自由に弾いていいならやってみよう、と思うようになりまりました。

それに、どうしたって、先生が楽器を弾けたほうが自分の指導計画の枠が広がります。子どもは生の演奏があった方が音楽遊びをもっと楽しむことができるでしょう。

Photo by Tasos Mansour on Unsplash

なので、自分で引ける範囲で、勝手に自分でめちゃくちゃなコードを、5パターンだけ作って、右手でメロディーを弾いて、左手てこのオリジナルコードで伴奏をつけるようににしてみると…これで結構何とかなっちゃいました。

しかも、これだと、この私でも即興伴奏が可能ですし、子供の顔を見ながらでもピアノが弾けます。こうなってくるとリズム遊びとか、アクション遊びとか、アイデアがどんどん広がります。

しかも、そんな風にいい加減に弾いていているのに、どこに行っても「いいなあ、ピアノが弾けるなんて~。」と褒められます(だってピアノを弾く幼稚園先生はオーストラリアではほとんどいません。)まるで天国(笑)。

だれにもプレッシャーをかけられずに自由な形式でピアノを弾いて子供と音楽表現を一緒に楽しんで、のびのびと毎日の保育を楽しんで来ました。転職を何度かしてきましたので、ある園では、それまで長いこと誰も使ってなかった古いピアノを使うことができ、そうじゃなかったら自分のキーボードを教室に設置して使い、そんな教師生活をかれこれもう20年やってます。

今ではピアノのない私の教室なんて考えられません(笑)。ピアノ様様です。

Photo by Hamid Tajik on Unsplash

また遊びに来てね!

Earth Children Blog 心ほっこりのんびり話、今回の「ピアノの先生とけんじ君の心ほっこり話」はいかがでしたか? Earth Children Blog では他にもみなさんの心がほっこりするユニークなお話をシェアさせて頂きます。ぜひこちらをクリックしてのぞいてみてくださいね。

くろねこはまた、オーストラリアでの幼稚園教諭体験をベースにした幼稚園プロジェクト型学習に特化する記事もたくさん出しています。オーストラリアの幼児教育事情も含めて、日本の先生方の指導案作りにユニークな新風をお届けけしています。Earth Children 幼稚園プロジェクト型学習のアイデアへのアクセスはこちらから!

購読登録がまだの方はここから購読登録してまたぜひくろねこの心ほっこりのんびり話にお付き合いくださいね。コメントもお待ちしています!コンタクトはこちらをクリック。

 

こんなお話もあるよ!

コメント(新着記事のお知らせを希望される方はチェックもしてね!)