早々と奮闘出陣要請

奮闘記の奮闘はまだまだ始まらないだろうと高をくくっていたら、早くも始まってしまった。さすがはくろねこである。今までのくろねこ先生の人生に奮闘はいつもつきものであった。夫ののび太君なんぞは、どこかでそれを楽しんでいる節がある。「今日は ちょっと嫌なことがあったよ」と悲しそうな顔で言ってみたら、「ネタ、ネタ、ネタが見つかったじゃん」、とまるで寿司職人みたいなことを言ってぐふぐふ面白そうに笑った。つまり今日起きた嫌なことは、この奮闘記の話のネタになっった、よかったじゃん、ってことだ。呑気きまわりないのだ。

前回、登場人物をイラスト書きで紹介しよう、といったが、もうそんな暇もなく奮闘が始まってしまったので、とりあえず話を始めたいと思う。登場人物はその都度紹介することにした。

さっそく幼稚園地下室落下事件

第1話で(まだの方はこちらをクリック)、オーストラリアの幼保育園でのEducational Leader というのがいかに食わせ物であることを話した。日本の主任教諭とは違って、権限がないくせに先生たちの実践向上の責任を担わされる、っていう、とんでもなく損な役なのである。

が、魅力もある。成功すりゃあ、限りなく魅力的で、ああこの仕事やってて本当に良かった!と心から思えるわけである。この魅力についても、おいおい話していこうかと思うが、とにかく、早くもその「魅力」からかけ離れたことが起きてしまったのである。くろねこ先生、階段の一段目に足をかけ、「さあ、上るか」と思っていたら、「アッツ」という間に地下室に落下した。

恐ろしいベテラン幼稚園先生の大所帯

「地下室に落下ストーリー」を書く前に、一番大切なことをちょっと、最初に書いておく。

くろねこ先生が働いている幼稚園はちょっと規模の大きい公立の幼稚園である。まだ開発途中の新しい住宅地にできた新設なので、今のところ3クラスしか運営されていないが、将来フル回転になると1クラス33人(先生3人)の6クラスになる。コレ、多分日本では普通なのであろうが、オーストラリアではマンモス級の幼稚園だ。

Photo by Ben White on Unsplash

で、先生の経験レベルなのだが、公立幼稚園というのは、通常少なくても5年以上の経験を要するが、この幼稚園はさらに先生たちの経験度が高く、くろねこも含めて全員20年以上のベテラン先生である。

これはちょっと恐ろしいことでもある。だって、くろねこもそうだけど、ベテラン先生ってのは、その豊富な経験の上にあって、みんな独自のスタイルが完全にに出来上がってしまっている。チョット横道にそれるが、オーストラリアの幼児教育指針(詳しくはこちらをクリック)は「見直しと進歩のための挑戦」がモットーで、これが常に実践者、つまり先生たちに求められる。なので、ベテランの先生といえども「これが私流」にとどまっていることは許されないはずだ。じゃ、どうするかっていうと、ベテランの先生達はこの「進歩のための挑戦」の仕方にこそ、自分たちの流儀を徹するわけである。これは恐ろしい。だけど、くろねこもそうだ(笑)。

くろねこが幼稚園でやりたくない仕事

ちょっとずれたが、なので、くろねこ先生の出した結論は、この幼稚園でのEducational leaderの役目は、先生達の指導をしたり助言をしたりすることではない、というものである。

じゃ、何をすればいいのか。

という事で、私くろねこ先生、この幼稚園でEducational leaderをやることになってから、結構明確なビジョンをつくった。

まず、「先生たちはみんなベテランなんだから」を理由にしてくろねこが絶対に「やらない」と決めた事ははこうである。

  • チェックリストみたいな、意味のないことはやらない。
  • 面倒くさいことはやらない。
  • 時間ばっかり食うこともやらない
  • 先生一人一人をオフィスによんで、堅苦しく「あなたの指導計画について説明してください」もやらない。
  • よって、堅苦しいクラスリポートもやらない。
  • 一人オフィスに座ってパソコン相手だけで仕事しない
  • 監査の時に提出するエビデンス資料につながらない様な効率的じゃない事はやらない
  • そして最後に、こうだ。 ベテラン先生たちはみんな自由なスタイルでクラス運営をするべきなのでそのスタイルや仕事を、絶対に「ジャッジ」しない。

こうだ。こうして自分でリストアップして見てみるみると、なかなか爽快である。「やらない」がこんなにあると、自分でも結構呆れる。が、一応本職は幼稚園教諭なわけで、もしこのリーダー職が失脚になっても、はっきり言って、自分の快適なメルボルンライフにほとんどインパクトはないのだ。だから、自分のやりたくないことは、やらない。とま、かなり緩いくろねこである。

ちょっと補足だが「チェックリスト」ってのは、例えばこうだ。『クラスルームの環境は、子供を歓迎するような設定になっているか』とか、『創造的な遊びの場には、自然素材を中心にしたマテリアルが随時用意されているか』とか、『子供が、たくさんの選択肢の中からそれぞれの興味の持った遊びに取り組めるよう、環境設定が整えられているか』とか、『プログラム(指導計画)は多文化の子供たちのパースペクティブを尊重しそれに対応できているか』などなど そういう質問に対してのチェックリストである。こういった項目が実に50個以上ある、なんていうチャイルドケアもある。チェックリストとは、Educational leader が、そういった先生一人一人の仕事項目について定期的にチェックするという、笑っちゃうくらいなクラッシック スタイルである。

くろねこは、こういうたぐいの事にはアレルギー体質である。こんなこと、たまに見ただけじゃあ、白黒でチェックできるわけない。

くろねこが幼稚園でやりたい愉快痛快な仕事

一方で、「やろう」と決めたことはこうだ。

  • つまらない「リポート」とか「チェックリスト」を制作するくらいだったら、もっと面白くやりたい。
  • いっぽう通行の意味のない「リポート」を制作するくらいだったら、「情報交換」をして先生たちがお互いに実践していることをシェアしたほうが面白い。
  • その「情報交換」は、先生たちみんながが面白く簡単に読める「ストーリー」スタイルがいい。ストーリーは、くろねこがつくる。
  • で、そのストーリーには先生たちのやってる「いいこと」だけを掲載してそれをシェアする。
  • 先生たちの「保育指導計画」もこのストーリーの中に入れちゃうのが面白い。
  • これらのストーリーは全て直接監査が来た時のための「実践エビデンス」としてファイルする。1隻2兆である。なんて効率的だ。愉快ゆかい。
  • オフィスに座ってパソコンだけと話をせず、どんどんクラスに入り込んで先生たちがやっていることを実際に見てみたほうが面白い。
  • そして、最後にこうだ。これが一番大事だ、たぶん。それは、「こちら側から『学ばせてほしい』というスタンスでやる、」という事。これだったらベテランの先生にも絶対に受け入れてもらえるるだろう、愉快ゆかい!

出陣1か月目の幼稚園での悲劇

と、ま、「やりたいこと」はすべて「面白いこと」をモットーとしてみた。考えただけでも愉快である。チャイルドケアにいるやる気のない若い先生たち(オーストラリアにはいっぱいいる)を「ヨイショヨイショ」とカツいでモチベーションを上げてあげる必要ももうなく、コミュニティ型の公立幼稚園のEducational leaderのように親の運営委員会(って何?詳細はこちらから)のご機嫌を取る必要もない。ベテランの先生とともに実践向上に向けて楽しくやってゆけばいいのである。

…と思っていたわけである。

ところが、である。これが裏目に出たのだ。しかも、くろねこ先生のEducational leader 奮闘記、始まってほんの1か月しかたっていない。

「地下室に落事件ストーリー」のお話の続きはまたこの次に。また是非遊びに来てね。

オーストラリア幼稚園先生奮闘記第3話はこちらから

こんなお話もあるよ!

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