こんにちは、オーストラリアはメルボルンの幼稚園教師、「子供が主体のプロジェクト型学習!」に20年間以上もハマっているくろねこ先生です。今回の記事は、プロジェクト型学習~Project based Learning(PBL)~って誰がどうやって広めた?いう、そのバックグラウンドに迫って、もっとPBLのことを知っちゃおう!、というそんな感じの記事です。PBLができた背景を知ることで、貴方のPBLの実践にもっと奥深い意義が生まれ、貴方は今度こそ生徒の心を鷲づかみにできるかも!

あなたが小学校や中学校の先生だったら、もしかすると 「ええっ,あんた、幼稚園のセンセでしょッ。幼稚園児がプロジェクト学習なんてできるのおおお?!」なんて言ってひっくり返ってるかもしれませんが、やります、やります。幼稚園の子供も大いにプロジェクト型の学習を楽しみます!幼児教育と言えば、今となっては日本でも大分お馴染みのレッジオエメリアなんてのは、実はプロジェクト型学習の本家本元もどきです。なのでプロジェクト型学習に興味があるのならぜひこの記事をお見逃さずに!

ちなみに「ええっと…プロジェクト型学習って一体何でしょう?」という方は、くろねこ先生が非常にわかりやすく説明したこちらの記事をぜひのぞいてみてくださいね!
さて、レッジオエメリアがプロジェクト型学習の本家本元「もどき」と書きましたが、そうなんです、戦後に展開されたレッジオエメリアアプローチはPBLの本家本元ではありません。じゃ、一体どっから始まったの?…ってなわけで、「PBLのバックグラウンドに迫る!」、まずその歴史をひも解いてゆきましょう!今回の記事では、古代から近世までの「けっこう昔」の歴史です笑。
ここはくろねこ先生のハチャメチャ勉強会のページ、誰でもぜひ参加しちゃってください!このブログは、日本の教員資格取得なのになぜかメルボルンで幼稚園教諭歴25年のくろねこ先生が、自分の勉強不足を補うために、ブログを書きながら、そこらへんの文献を読み解く奮闘劇を皆さんとシェアしちゃおう!という安易な趣旨の勉強シリーズです(笑)読者の皆さんもコメント欄を使ってぜひ参加してください、楽しみにしてます!くろねこへの直接Eメールはこちら→Earth.children.blog@gmail.com また ブログのコメント欄からのメッセージやコンタクトはこちらをタップ!
プロジェクト型学習の歴史
では早速PBLの歴史をのぞいてみてみましょう。教員のためのトレーニングを提供している米国のLiFTという会社のウェブサイトに簡単でわかりやすい年表があったので紹介します。

古代
すごく古いのはめんどくさいので飛ばしちゃおうと思いましたが、ちょっと自分の発見が面白かったので一言。孔子ってのは英語だとConfuciusって書くんですねえ。30年近くも教師やってて初めて知りました笑笑。この孔子とか, ソクラテスとかアリストテレスはつまり、 古代から構築型学習みたいな理論をとっくに取り入れていた。コレ、くろねこ先生の理解では、つまり「学習」ってのは本来そういう主体性があるところから始まったってことなんでしょう。

中世
くろねこ先生がちょっと驚いたのは、もう4世紀も前に打ち出したComeniusコメニウスの教育哲学。LiFTの年表にはこう書いてあります。
“Comenius believed that learning should be centred on the student, not the teacher, that learning should be tied into everyday experience.”

「学習ってのは先生ではなく子供が中心であるべき!」なんてことを言ってるわけです。「学習は日常の経験と結びつけるべき」とも言ってますが、生徒自身が身近な環境から感じた疑問や興味を学習のテーマにするプロジェクト型学習に、完全に繋がってます。
「子供たちが今興味があることは何だろうか? 何を次の学習テーマにしたいいんだろうか、うーん…」なんて、くろねこも誰もいない教室でタソガレることがよくありますが、この偉大なコメニウスも4000年以上も前に同じことしてたんでしょうか。でもって、やっぱり当時の頭の固い人に「普通にマニュアル通りやりゃあイイんだッ」なんて言われて、「古い人間はこれだから駄目だ」って腹をたてていたのかも、4世紀も前に笑笑。

近世
近世になると、幼児教育やってる人にはお馴染みのPestalozziペスタロッチ、Froebel フレーベル、 そしてGoldschmidtゴールドシュミット と出てきます。このお三方は互いにに影響を受けた教育哲学者。
ペスタロッチPestalozzi
” He believes that the student should participate actively in the learning process (laying the foundation for the student choice and voice component of PBL)” 「彼は生徒は活発に学習過程に参加するべきだッ」って書いてあります。このActively ってのは「能動的に」って訳してもいいんじゃないかと思います。「能動的な学習への参加」ってのが、プロジェクト学習の基本デスから、やっぱりペスタロッチの哲学もPBLにしっかり繋がってますね。

ペスタロッチっっていえば「人間教育」の思想が有名で、「感覚、経験を通して学ぶ」ことの重要性を説いた教育者ですが、ちょっと面白い文献を見つけました。日本大学の教授の小笠原喜ッて先生が「ペスタロッチ直観教授の「で」から「を」への問い直し」っていう論文で、長い間みんな誤解してたみたいだけど、ペスタロッチは、感覚で学ぶことが大事だって言ってるんじゃなくて、ホントは感覚をつかうことを学ぶってことが大事だって言ってるのさ、とコブシをあげていらっしゃいます。

これ、どうプロジェクト学習と結ぶついてるかっていうと、くろねこの解釈はこうです。子どもはプロジェクト学習で、たくさんの試行錯誤的なことに向き合います。いろいろなことを、一緒に調べてみたり、実験して失敗したり、何かを発見して喜んでみたり。で、このような体験から子供が得た「感覚」が「学び」になるわけです。「発見」したその事実自体ももちろん「知識」としての学びになっているわけですが、それよりも、その発見に至ったまでの過程で味わった「試行錯誤」の経験がホントの「学び」の感覚を育てるわけです。って、なんか、そんな感じだと思うんですけど、「その解読、ちと違うんじゃない?」って言う人いたらおしえてください。

フレーベルFrobel
で、そのペスタロッチの弟子が、みんなお馴染みフレーベル、初めて「幼稚園」なんぞという代物をたてた人です。あなたもどこかの幼稚園の先生や保育士さんなら、私たちみんな、このおっちゃんの恩恵受けてます。いま仕事があるのは、このおっちゃんのおかげですねえ笑笑。

“He believed the role of teacher is encourage self-expression through play, both individually and in group activities, not to drill or indoctrinate children.「 教え込むのではなく遊びを通して自己表現を促す」ことこそが教師の役目だとフレーベルは信じていた。資料にはこう書いてあります。なるほど。
フレーベルっていうヒトは、子どもが内在的にすでに持っている優れた性質や能力を引き出してあげることこそが、教師の役目であると言っています。そうするには、子どもの主体的な「遊び」を大切にしなければならない、と、まあ、今となっちゃア当たり前のこと、言ってますが、「恩物」なんていう今の積み木の元祖をつくっちゃったりして、当時はセンセーショナルだったに違いありません。

フレーベルの教育哲学がどのようにプロジェクト学習と結び付くかって説明してある文献がほとんど見つからなかったのですが、ま、どの学習スタイルを語るにも、この人の哲学無視してでは語れない、って、なんかそういうことだと思います。「どうもこうも、本来、教育ってのは子ども主体であるはずだ」ってフレーベルさんはお墓の中で言ってらっしゃいます(笑)。
プロジェクト型学習っていうのは、子どもが主体であるのが基本です。フレーベルのお得意の「子どもの中に内在する生きる力を引き出す」ってのは、プロジェクト学習で、先生が子どもと同じ立ち位置に立って、子どもの発見を助けていく、ってのと同じことだと思います。

「子どもが主体」の教育をもっと深堀したい方、くろねこ先生の記事、「子どもが主体の学びの冒険」シーリズをぜひ読んでみてくださいねッ。ここでリンクした記事では、子供主体のプロジェクト学習を「子ども主体の発表会」例に絞って、日本の学習指導要領にひもづけてて細かく説明しています。私のメルボルンの幼稚園での実践例もたくさん挙げました。こちらをタップ。
ゴールドシュミットGoldschmidt
この人、誰だっけ?ってなった人、アナタだけじゃあ、ぜったいありません笑。 このおばあちゃまは、フレーベルに影響されて、まだ女子教育が禁止されていた1800年後期に女子教育の推進を図った人物だそうです。あんまり深堀しませんが、詰まるところ、すべての子どには内在した素晴らしい生命力があるって、フレーベルさんがコブシを挙げたわけですから、「それは、もちろん、女の子の中にもございますわよ。」とおっしゃったわけです。ま、だからこれも「子どもが主体の教育」ってのに大いに関係があるわけですが、男女問わず平等にってことでしょう。今となっちゃあ当たり前ですが、こういうヒトがいてくれたので、現在世界中で、すべての子どもが学校教育を受けられている(はず)わけです。

ちなみに年表には、Introduced ” motherliness” to education, furthering the perceived value of social emotional learning なんてかいてあります。彼女は教育に「母性」を取り入れた、と書いてありますが、それがどうPBL と関係しているのかは、ちょっと謎でした笑。あれですかねえ、「社会的感情学習の価値認識を促した」なんて書いてあるので、つまり対人スキルとか、協力の精神とか 自己責任能力を伸ばす教育を推進した、で、そこには母性の力が大きく役に立つ、って、ま、そんなことでしょうか。これらのスキルは、まさにプロジェクト学習で培われるものと同じですね。

という事で、この時代に、こんな風なお三方が活躍されたので、その後の時代に「子どもが主体の教育」を発展させていくための礎が築かれた、って、ま、そんな感じでしょうか。こういう人たちがいなかったら、「子どもが主体の」なんて考え方は発展しなかったわけで、それがなかったらプロジェクト型学習なんていうのは、教育法として成り立つことはなかった、と、そういうわけです。

近代
さて、いよいよ近代史。こっからはお馴染みの顔がせいぞろい!
デューィJohn Dewey

出ました!このオッちゃんこそが、我らが「プロジェクト型学習の父」でございます!
次回に続く!
…と盛り上がったところで、今回の記事はこれでおしまい、続きは「子供が主体のプロジェクト学習 歴史 最近のはなし編」でどうぞ(更新中)!
参考文献と引用
- Project-based Learning around the world, CODE-University of Applied Sciences https://code.berlin/en/blog/project-based-learning-around-the-world
- The History of Project Based Learning (PBL), LiFT Learning, https://liftlearning.com/the-history-of-pbl/
- ペスタロッチ直観教授の「で」から「を」への問い直し、小笠原喜康、つくばポジトリ、https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/2007098/files/KHK_19-1.pdf
- 和久さんにききたい!part.3 フレーベルの教育理論 https://www.youtube.com/watch?v=RiYT-IJ15ws
- Friedrich Froebel, Early Education~The British Association for Early Childhood Education~, https://early-education.org.uk/friedrich-froebel/#:~:text=He%20believed%20that%20%E2%80%9Cplay%20is,through%20direct%20experience%20with%20it.
- The Shalvi/Hyman Encyclopedia of Jewish Women, Juwish Women’s achive, https://jwa.org/encyclopedia/article/goldschmidt-henriette Jewish Women